2019年、金融庁の審議会で示され話題となった「老後2000万円」問題。あれから6年。もはや、老後資金は「2000万円」では厳しい時代となりつつある。実際、いくらあれば余裕を持って安心できるのだろうか。同い年の夫婦2人暮らし世帯で見てみよう。
ともに65歳から受給するとして、会社員男性の年金平均月額は16万6606円で、妻が専業主婦なら年金は月額5万5777円(2023年、厚労省)。合わせて22万2383円となる。分かりやすく22万円として計算する。
高齢者夫婦世帯の月平均の支出額は28万2497円(2023年、総務省)。昨今の物価上昇を考え、29万円としよう。
差し引き、月々7万円の赤字となる。年間だと84万円足りない。
仮に、夫が男性の平均寿命81.09歳(2023年、厚労省)まで生きるとして、16年間で1344万円必要となる。
その他、生活家電の買い換えを含めたリフォーム代や子どもたちの結婚祝い金など、介護費用、葬儀供養代も準備しておきたい。そもそも、「老後2000万問題」では、こうした経費をほぼ考慮していない。余裕を持って準備するとして、これらをすべて含めると3044万円となる。
2人が長生きして90歳まで生きるとするなら、さらに84万円が9年分で、756万円必要だ。すべて合わせると、なんと3800万円となる。
共働きかどうか、ローンが残っているかどうか、また、介護にほとんどかからなければ必要な金額も違ってくるが、ひとまず65歳で4000万円の貯蓄が目安になるのではないだろうか。
このシミュレーションについて、独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として活躍する株式会社みえほけん代表取締役・野田基紀氏(51)に聞いた。
「65歳以降働くことが厳しいのであれば、上記の通り、すぐにでも4000万円の貯蓄の用意をお勧めします。可能であれば、身体が動くまで働き、妻にも勤めに出てもらうのが賢明です。今は良くても将来切り詰める生活になりかねません。もう時間があまりないご家庭は徹底的に支出を見直し、孫や子にお金をかけるのはやめて、自分たちの長い老後に備えるべきです。投資については、一番はiDeCoもしくは企業型確定拠出年金、2番目にNISAもしくは家庭状況により補償も必要な場合は変額保険や外貨建て保険、3番目に余裕が出てくれば不動産投資も選択肢になるでしょう。節税効果の高い投資方法や制度を使うことがポイントです。金や仮想通貨は換金時の税金を考えると、今の制度では得策ではありません」
老後は2000万円どころではない。年金自体の先行きも不安だ。贅沢三昧ではないセカンドライフでも、4000万円もの資金が必要な時代となりつつある。