消費経済アナリストの渡辺広明氏がこのほど、都内で開催された「2025年度の消費と金融のトレンド予測」と題したパネルディスカッションに経済アナリストの馬渕磨理子氏と共に参加し、国内の消費動向のポイントとして「就業している60代のシニア」と「推し活に熱心なZ世代」という〝老若二極化〟した現状を指摘した。
共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社「ロイヤリティ マーケティング」(本社・東京)の主催。同社が実施した20-70代の男女を対象にした意識調査の結果を元に、生活者の経済環境、消費や金融の動向などについて話し合った。
その中で、渡辺氏は「GDPの54%は個人消費。そこに注目した時、各年代のうちでカギを握るのは『推し活』をするZ世代の若者と60代の『アクティブ・シニア』(働く高齢者)です。今、就職でいうと若者の圧倒的な売り手市場。その若者と、アクティブ・シニアが消費のカギを握るのではないか」と解説した。
「推し活」とは、アイドルやスポーツ選手、アニメや漫画、鉄道など、自分の生きがいとなる様々な対象を追う活動を意味する。そこではグッズ購入やライブやイベント、試合などのチケット代や移動交通費といった具合に「お金を落とす」という消費行動が必然的に生じる。
渡辺氏は「若者では〝推し活〟の中心となるZ世代の支出に期待ができる。推し活は今、3兆5000億円ものお金が動いている。暮らしていくのに必要ではないかもしれないですが、お金を使って社会を回していくという意味ではすごく大事なんじゃないかと思います」と見解を示した。
さらに、同氏は「若い人は旅行、レジャー・娯楽、衣類、自分への投資の支出が多い」と〝推し活〟以外の特徴も挙げ、「若者はたくさんお金を使っていただく癖を付けていかなくてはいけないので、それはいいことだと思います。また、今の若い人はコロナ禍で旅行にも行けなかった人も多いので、そのリベンジ的なところはすごく大きいのではないか」とも付け加えた。
一方で、同氏は「日本における個人金融資産は過去最高の2230兆円ですが、その約6割は60代以上が持っている。そして約半分が現預金です。このアクティブ・シニアの消費は、マーケティングをしている人にとって狙い目かもしれない」と語った。
一般的に〝定年〟となる還暦を過ぎても働くことが当たり前の社会になっている。渡辺氏は「内閣府によると.60~64歳の就業率は男性が84・4%、女性が63・8%。1つ年代を上げた65~69歳でも、男性が61・6%、女性は43・1%が働いています」と説明。この数字からも〝働く令和の60代〟というイメージが膨らむ。
渡辺氏は「「アクティブ・シニアの消費とZ世代の推し活』が大事な消費行動というところはあるんですけど、マーケティングもメディアもそうした年代について、今後もきちんと分析していくことが重要だと思います」と締めくくった。