1年以上婚活を続けるも、上手くいっていない状況に疲れてしまった38歳女性の会社員Aさんは、母親から「私も少し探してみようか」と持ちかけられ、親が本人に代わって結婚相手を探す「代理婚活」を利用することにした。
ある日、母親から数人分のプロフィールを見せられたAさんは、「ほかにはいなかったの?」と尋ねた。すると母親は、「いたけど、あなたには合わなさそうだったから断っておいた」と答える。勤務地や家族構成などを見て、母親の判断で候補から外したという。
たしかに相手を探してもらうようにお願いしたものの、勝手に選別をする母にAさんは「結婚するのは私なのに……」と不満を抱いた。
親の手助けはどこまでならサポートで、どこから過干渉になるのだろうか。代理婚活における親子の距離感について、婚活心理学者・心理カウンセラーの吉野天海さんに聞いた。
代理婚活は「出会いのきっかけ」まで
―代理婚活が広がっている背景には、結婚や出会いをめぐるどのような変化があるのでしょうか。
現在、マッチングアプリなど出会いの手段は豊富ですが、選択肢が多すぎて「誰が自分に合うかわからない」と婚活迷子になる若者が増えています。
こども家庭庁の調査でも、結婚したい未婚者の約7割が「相手探しのために特に行動していない」と答えています。結婚の意思はあるのに踏み出せない我が子を見て、「きっかけだけでも作ってあげたい」と親御さんが動くケースが増えているのでしょう。
―親の手助けは、どこまでならサポートで、どこから過干渉になるのでしょうか。
「誰が判断して決めているか」が境界線です。
親御さんは「こんな人がいたよ」と候補を渡す『スカウトマン』に徹するのが適切なサポートです。
一方、親が相手をジャッジする『面接官』になると過干渉になってしまいます。心理学の研究でも、親は勤務先や家柄など「目に見える条件」を重視しがちですが、本人が幸せを感じるのは「一緒にいて落ち着くか」などの内面的な相性だと分かっています。
親が良かれと思って条件だけで先回りして断ってしまうと、本人の大切な選択肢を奪うことになります。
―代理婚活のメリットとリスクは?
メリットは、本人の負担を減らしつつ出会いの幅を広げられる点です。
自分だと検索で弾いてしまうような、思いがけない良縁に出会える可能性があります。リスクは、親が介入することで「条件選別」が厳しくなりすぎることです。心理学の実験では「頭で考える理想の条件」と「実際に会って惹かれる相手」は一致しないことが判明しています。
会う前の書類段階で親が条件で切り捨ててしまうと、最高のパートナーになるはずだった相手を自ら逃す危険があります。
―親子でどのようなルールを決めておけばよいでしょうか。
成功のためには、事前に親子では、1.候補はすべて本人に見せる(親の独断で断らない)、2.本人が望まない条件を親が勝手に付け足さない、3.お相手と会うかどうかの「最終決定権」は必ず本人が持つという3つのルールを共有することが大切です。
親御さんはあくまでもきっかけを作る「スカウトマン」として、お子様の意思を最後までリスペクトする。この適度な距離感を保つことが、良いご縁を引き寄せる一番の秘訣です。
◆吉野天海(よしの・あみ) 株式会社SMARTBRIDAL代表取締役社長/JPSAアシスタントプロスピーカー/恋愛心理学者・心理カウンセラー
結婚相談所SMARTBRIDAL代表。「MBA(経営学)・心理学・AI・オンライン」を融合させた科学的根拠にもとづく戦略的婚活をサポートしている。全国数千社ある結婚相談所のなかで、0.19%未満の成婚マイスターの称号を取得。「離婚しない幸せな結婚」を理念に掲げ、さまざまな境遇の人の婚活をサポートしている。