会社員のAさん(40代前半女性)は30代のころ、同級生の友人と一緒に婚活を始めた。Aさんの理想は「高学歴・高収入・高身長」のいわゆる『三高男子』。お見合いを重ねるものの『理想の条件』に当てはまる人が見つからず、いつしか40代になっていた。
Aさんは「もう結婚は諦めるしかないのか…」と思っていたとき、友人から「結婚が決まった!」との話が飛び込んできた。話を聞くと、お相手はなんと年下の『三高男子』。友人とAさんは年齢も年収もほぼ一緒のはずなのに、なぜこうも差が付いてしまったのだろうか。やはり三高男子は諦めるべきだろうか。結婚相談所「SMART BRIDAL」代表取締役で、恋愛婚活心理学者の吉野麻衣子さんに話を聞いた。
―Aさんのように「三高男子がいい」と思ってしまうのは、どんな心理が働いているのでしょうか
心理学的に見ると、自己肯定感の低さをパートナーのスペックで補おうとする「ハロー効果(後光効果)」への依存が挙げられます。「彼が凄い=選ばれた私も凄い」と感じたいのです。
また、長く婚活を続けるほど陥るのが「サンクコスト(埋没費用)効果」です。「これだけ時間と労力をかけたのだから、元を取らないと損だ」という心理が働き、後に引けなくなっている状態です。さらに、20代の頃の自分という「過去の栄光」と「現在の市場価値」のズレを直視することへの恐怖心も、高望みを止められない要因の一つと言えます。
―実際に理想のお相手と結ばれる40代女性には、どんな共通点がありますか
成功する女性は「メタ認知能力(自分を客観視する力)」が非常に高いのが特徴です。彼女たちは、婚活市場における自分の立ち位置を冷静に把握しています。その上で、相手に何を求めるか(TAKE)よりも、相手の人生にどんな彩りを自分が与えられるか(GIVE)という「貢献する視点」を持っています。
ハイスペックな男性ほど、家庭には癒やしや自分への承認を求めます。ご友人が選ばれたのは、外見や若さの勝負ではなく、「彼にとって手放したくない情緒的価値(安らぎや信頼)、自身への自己肯定感の向上」を始めとする、相手への提供価値を差し出せるパートナーだと認識されたからでしょう。
―「妥協」と「譲れない軸」の見極め方を教えてください
まずは条件を「MUST(絶対条件)」と「WANT(希望条件)」に分けましょう。MUSTは「価値観の一致」など根幹に関わる部分で、学歴や身長などは多くの場合WANTです。
更にそれは何故なのか、どういうきっかけからそうなったのか、考え方の源泉をしっかり分析し、自分のコンプレックスを解消するための要素が本当にないか。そして、条件の前に、自分はどんな結婚生活を送りたくて、そのためにはどんな人間性の方がいいのかまで考えましょう。
見極めの魔法の質問は、「その条件がなくなっても、80歳まで隣で笑い合えるか?」「その条件は変わることの出来ないところなのか(例えばポッチャリが嫌でも、ダイエットすればスリムになれるので、体型は除外される等)」です。長い人生、何が起きるか完全に予測することは不可能です。だからこそ、今のスペックにこだわるのではなく、不測の事態が起きても「この人となら寄り添い、話し合いながら協力して柔軟に生きていけるか」という視点を、何より大切にしてください。
―「理想の結婚」を叶えたい女性に向けて、アドバイスをお願いします
「バックキャスティング(逆算思考)」を取り入れましょう。「自分がどんな生活を幸せと感じるか」というゴールから逆算し、必要な環境を考えるのです。ポイントは、将来二人で協力して変えられること(現在の年収や外見など)は条件から外し、変えられないこと(気質や根本的な価値観)だけを条件に入れること。条件のハードルと枠を適切に広げつつ、出会いの数を増やし、多くの失敗をして、「選ばれる」ための対人知性を磨く。この論理的かつ柔軟なアプローチこそが、理想の結婚への近道となります。
◆吉野麻衣子(よしの・まいこ)株式会社SMART BRIDAL代表取締役社長/MBAホルダー/恋愛婚活心理学者/モデル
結婚相談所SMART BRIDAL代表として、「MBA(経営学)・心理学・AI・オンライン」を融合させた科学的根拠に基づく戦略的婚活をサポートしている。「離婚しない幸せな結婚」を理念に掲げ、どの様な境遇の方でも幸せな結婚が出来るように、多くの方を幸せな結婚に導いている。