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阿川佐和子「原爆の悲劇」への思い綴る…8・9長崎の日に東京で朗読劇出演、父の故郷・広島で被爆者と交流

北村 泰介 北村 泰介
8月9日に都内で上演される朗読劇「ナガサキの郵便配達」に出演する阿川佐和子(撮影・枦木 功)
8月9日に都内で上演される朗読劇「ナガサキの郵便配達」に出演する阿川佐和子(撮影・枦木 功)

 エッセイスト、作家でタレントの阿川佐和子が8月9日に東京・浜離宮朝日ホールで上演される舞台「ナガサキの郵便配達・朗読と音楽の集い」に出演する。英国人作家が記した「日本人も知らない長崎の原爆の悲劇」を6人の俳優が読み伝える朗読劇。その1人である阿川が、よろず~ニュースに対し、今公演にかける思いを綴った。

 2019年以来、8回目を迎える公演。阿川は昨年に続き2度目の出演となる。阿川は「友人の紹介で知り合ったグラフィックデザイナーの齋藤芳弘さんから『朗読をしてほしい』と頼まれたのは去年のこと。そのときは深く考えもせず、朗読の仕事は好きなので、『はい。よろしくお願いします』とお引き受けしただけだったが、繙(ひもと)いてみれば、まことに意義のある深い内容の作業であったことをあとで思い知った」と振り返った。

 米国による長崎への原爆投下は1945年8月9日。その3日前、8月6日に広島が被爆した。広島市出身の作家である父・阿川弘之氏(2015年死去、享年94)の故郷に足を運んだことから、阿川も被爆者と接し、その生き方を受け止めた。

 「私の父は広島生まれだったので、小さい頃から広島の親戚の家には足繁く通い、原爆投下の話は何度も聞かされて育った。父の身内には幸いにして重症の被爆者はいなかったが、被爆した人たちに会う機会も多く、幼い頃は、顔が半分ただれていたり、腕が赤く固まっていたりする姿を見て、最初は失礼ながら『怖い……』と思った。しかし、その方々がなんとも明るく前向きに生きていらっしゃる姿を見るにつれ、どれほど身も心も傷つけられただろうに、なぜ人を恨むこともせず、世間から隠れることもせず、堂々と明るく過ごしていらっしゃるのかと驚いた」

 原爆による悲劇にみまわれながらも、前向きに生きる父の同級生。伝えられた力強い言葉が忘れられない。そのやりとりを、阿川は次のように回顧した。

 「あれは私が大人になってからのこと。広島を訪れ、なぜかときどきデートをする父の小学校の同級生の方(父と違い優しくてステキな紳士だったのです)とお茶を飲んでいるとき、私は質問した。『なぜあれほどの目に遭いながら、アメリカを恨むこともしないで、みんな明るくしていられるのですか?』。紳士ご自身は幸いにも被爆しなかったが、兄弟親戚はたくさんなくされた。戦争から帰ってきたら故郷はすっかり焼け野原。どれほど悲惨な光景を目の当たりになさったことか、想像を絶するものがある。でも紳士は頬を緩めておっしゃった。『そりゃあね、あんときは、この世はお終いかあ思うたけど、悲観してばかりもおられんでしょう。とにかく前に進まんと。生きていかにゃならんって思ったんよ。そのことで必死だったからねえ。恨んでる暇はなかったよ』。優しい広島弁であっけらかんとおっしゃったとき、私は涙が溢(あふ)れてきたのを覚えている」

 朗読劇の原作は、英国人作家のピーター・タウンゼント氏によるノンフィクション小説「ナガサキの郵便配達」(84年)。16歳で郵便配達中に被爆した谷口稜瞱(スミテル)さんをモデルとし、生涯をかけて核廃絶を訴え続けた谷口さんの生き様を描く。阿川は父の故郷・広島の被爆者から伝えられた思いを長崎の「スミテル少年」にも重ねた。

 「長崎で原爆に遭った方々も、きっと同じ思いだったのではなかろうか。スミテルさんの被爆からその後の人生をたどる物語。それを連合国側であったイギリスのタウンゼントさんが、どういう気持でつくってくださったのか。分からないけれど、その切々とした、しかし同時に凛(りん)とした姿勢が浮かび上がるかのごとき文章に心を揺さぶられない人はいないはずである」

 広島・長崎への原爆投下から81年となる夏がやって来る。いまだに世界では戦火が絶えず、「核の脅威」が取り沙汰されている。

 「もはや原爆投下の事実は、今の若い人たちにとって歴史の教科書でしか知ることのない遠い光景かもしれない。だからこそ、そんな時代だからこそ、我々の声を通して知っていただきたい。そして、あれほどの悲惨な経験をしてもなお、誰かの小さな都合で地球上に戦争がなくならない今の状況に改めて首を傾(かし)げてもらいたい。そんな気持を込めて、私にとって2回目となる朗読会にて、この大事な物語を声でお届けしたいです」

 阿川は心からのメッセージを送った。今公演には、阿川、中江有里、有森也実、魏涼子、長谷川真弓、演出も担当する松田洋治が出演。クラシックギタリストの佐藤洋平とピアニストの増井咲による「ナガサキ組曲」の演奏も朗読に寄り添い、出演者6人のトークショーがフリーアナウンサー・安東弘樹の司会で行われる。

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