会社員のAさんは、なかなか治らない顔の吹き出物や肌荒れに悩んでいる。高価な美容液などを試しても効果を感じられず、鏡を見るたびに気分が沈む毎日を送っていた。
必死に保湿をおこなうものの、肌の状態はみるみる悪くなっていくばかり。近ごろは鼻炎や目のかゆみといったアレルギー症状まで出ている。
そんなある日、Aさんの肌トラブルやアレルギー症状は急に改善されていった。その理由が思い当たらないAさんは、この話を友人に相談してみると「もしかしてAって便秘だった?」と言われる。
友人の話では便秘になっていると肌トラブルを抱えがちになるそうだ。実際にAさんは日ごろから便秘がちで、肌トラブルが改善する数日前に便秘が解消していた。
では、なぜ腸内に溜まった便が肌荒れや体調不良の原因になるのだろうか。神奈川県横浜市の青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニックの院長、金沢憲由さんに話を聞いた。
―なぜ腸内に長く留まった便が、肌荒れを引き起こす可能性があるのでしょうか?
腸内に便が長く留まると、悪玉菌が増殖して食物の残りカスを腐敗させ、アンモニアや硫化水素などの有害物質(腸内毒素)を大量に発生させます。
これらの有害物質は腸壁から血管へと吸収され、血液に乗って全身を巡ります。通常は肝臓で解毒されますが、許容量を超えると体は「第二の排泄器官」である肌(皮膚)から汗や皮脂と一緒に排泄しようと試みます。この際、有害物質が皮膚の細胞やターンオーバー(肌の新陳代謝)を阻害し、毛穴の炎症を誘発することで、ニキビや吹き出物、肌の乾燥といった肌荒れを引き起こすのです。
つまり、腸内の「排泄の滞り」が皮膚の負担となり、肌トラブルとして表面化します。
―便秘がアレルギーや免疫力低下まで引き起こすというのは本当でしょうか?
はい、本当です。免疫細胞の約70%は腸に集中しているため、便秘は全身に深刻な悪影響を及ぼします。便秘で悪玉菌が増えると、免疫の暴走を抑える細胞が減少し、花粉症やアトピーなどのアレルギー症状が悪化します。また、病原菌を防ぐ抗体(IgA)の分泌も減るため、風邪などの感染症リスク(免疫力低下)が高まります。
―ほかにも、便秘で引き起こされる可能性がある疾患ありますか
便秘によって糞便中の発がん物質が腸壁を刺激し続けるため、大腸がんリスクの増加や、排便時のいきみによる血圧急上昇が招く脳卒中や心筋梗塞、脳腸相関による自律神経の乱れ(頭痛・不眠)や痔など、全身のリスクを引き起こします。そのため、便秘は放置せず早期の治療が大切です。
―腸内環境を改善するためには、どのような生活習慣や食生活を送ればよいですか
腸内環境の改善には、善玉菌の「摂取」と「育成」を同時におこなうアプローチ『シンバイオティクス』が極めて有効です。食生活では、発酵食品(納豆やヨーグルトなど)から生きた善玉菌を補い、同時に菌のエサとなる水溶性食物繊維(ごぼう、海藻、アボカドなど)やオリゴ糖を積極的に摂りましょう。
生活習慣では、毎朝コップ1杯のお水を飲むことで腸の蠕動(ぜんどう)運動を刺激し、排便リズムを整えます。また、適度なウォーキングは腸を物理的に刺激し、十分な睡眠は自律神経のバランスを整えて腸の動きを活発にします。
これらを習慣化し、「出すべきものを毎日出す」サイクルを作ることが健康な腸への近道です。
◆金沢憲由(かなざわ・のりよし) 神奈川県横浜市青葉区、青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック院長
秋田大学医学部2007年卒業。消化器内科を中心に、一般内科から健診・人間ドックまで広く診療を扱い、年間4500件以上の内視鏡検査をおこなう(2025年実績)。
▽青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニックホームページ
https://kanacli.jp