商談に同席した上司が相手の名前を間違えたまま何度も連呼している…という状況になった時、どのように対応すればいいだろうか。その場で間違いを指摘して自分の上司と気まずい雰囲気になったら…。スルーして先方の機嫌が悪くなったら…。いずれにしても、板挟みになった立場として悩ましいところだ。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対策を提言した。
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【今回のピンチ】
得意先との商談。大事な局面ということで初参加した上司が、さっきから先方の責任者の名前を間違えて呼んでいる。相手は微妙な表情をしているが、訂正すべきか否か。
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あなたは、機械メーカーの営業マン。得意先が最新の大型機械に興味を持ってくれて、そろそろ契約かという段階まで来ました。今日は大事な局面ということで、上司も同行。先方も責任者の偉い人が同席しています。
やや硬い雰囲気で話が進む中、上司が先方の責任者である「ワタベさん」に向かって、「ワタナベ様といたしましては」といった調子で名前の間違いを連発しています。
そのたびに相手の眉が「ピクッ」と動いている気がしますが、本人も横にいる部下も間違いを指摘してはきません。
もし相手が内心「名前を間違えるなんて許せない!」と腹を立てていたら、大きな契約がパーになってしまうかも……。ただ、よくあることと気にせず流してくれている可能性もあります。さて、どうしたものか。
ここは「より大きなリスク」を防ぎたいところ。早く手を打てば、上司の失態をカバーできるかもしれません。仮に相手が気にしていないとしても、手を打ったことで相手を怒らせることはないでしょう。
問題は、どう打つか。いきなり立ち上がって、上司に「違います!ワタナベさんじゃなくてワタベさんです。謝ってください!」と叫んだら、場を凍りつかせてしまいます。先方からも上司からも「なんだこいつ」と冷たい目を向けられるでしょう。
穏当かつ手堅いのは、適当なタイミングで話に割って入って「先ほどワタベ様がおっしゃったように」など、相手の正しい名前を発する作戦。しかし、すっかり「ワタナベ」だと思い込んでいる上司が、すぐにピンと来て間違いに気づく可能性は低そうです。
その場合は何度も繰り返すしかありませんが、どこで話に割って入ろうかと考えていたら、肝心の商談の内容が頭に入ってきません。強引にやり過ぎると、上司から「話の腰を折るんじゃない」と注意されそうです。
ここは自分が泥をかぶって、悩ましい状況にピリオドを打ちましょう。なるべく早いタイミングで「この点について、ワタナベ様は……いや、たいへん失礼いたしました。ワタベ様は~」と、名前を読み間違えてすぐさま訂正。さらに「ワタベ様をワタナベ様とお呼びするなんて、本当に申し訳ありません!」と念入りに強調しつつ大げさに謝ります。
ここまですれば、上司も「あっ、オレも間違っていたかも」と気づいて、その後はシレッと正しい名前で呼びかけるでしょう。先方も、こちらの意図を察して「自分が悪者になって上司をフォローするとは、なんてアッパレな部下だろう」と高く評価してくれるに違いありません。察してくれなかったとしても、それはそれで大丈夫です。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは、まさにこのこと。やっぱり昔の人はいいこと言いますね。昔の人は、こういう状況はまったく想像していなかったでしょうけど。