30代の会社員Aさんは、妻と幼い子どもふたりを抱え、数年前からマイホーム計画を温めてきた。共働きとはいえ、都内近郊の物件は予算をすぐ超える。頭金が足りないまま検討だけが続いていたある日、65歳の父親から「家を建てるなら1000万円を援助する」という思わぬ提案があった。
ただし「住宅取得用の資金として受け取ること」を条件として言われ、Aさんは少しためらいを感じた。その理由は、2人の子どもの教育費用にある。長女の習い事が月2万円、長男の受験塾の追加費用も視野に入ってきた時期だったことから、1000万円を丸ごと住宅だけに使用することに不満があったのだ。
Aさんはこの考えを率直に父親に言うと「バカ言え、税金取られるぞ」と一喝されてしまうのだった。では実際に使用用途によって課税金額に大きな変更はあるのだろうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞いた。
贈与には種類によって税額が変わる
ー住宅用と通常の贈与で、1000万円もらったときの税額はどれだけ違うのでしょうか?
住宅取得等資金の贈与税非課税制度を使えば、一定の条件を満たすことで最大1000万円まで非課税になります。一方で通常の贈与の場合は、基礎控除の110万円を差し引いた890万円に贈与税がかかります。
Aさんのケースでは、特例贈与財産用の税率が適用され、税率は30%で控除額90万円を引くと、177万円の贈与税が発生する計算です。同じ1000万円をもらうのに、住宅用なら税額ゼロで通常贈与なら177万円が必要になることを考えると、Aさんの父親が一喝するのも理解できます。
ただし、非課税制度を使うには条件があります。贈与を受ける側が贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること、その年の合計所得が2000万円以下であることなどです。
ーこの非課税制度は2026年12月末までなので、年内に贈与を受ければ問題ないのでしょうか?
非課税制度を利用するには贈与を受けるタイミングだけでなく、その後のスケジュールも重要です。
贈与を受けた翌年3月15日までに入居すること、または同日までに入居できなくても入居が確実と見込まれることが条件となります。
ただし、贈与を受けた翌年12月31日までに実際に入居していなければ、原則として特例の適用は受けられず、修正申告が必要になるので注意しましょう。2026年に贈与を受けるなら、2027年12月31日が入居の最終期限です。
工務店の工期やローンの審査にかかる時間を考えると、2026年末ギリギリに贈与を受けて間に合わせるのはかなりタイトとなるでしょう。
ー住宅用の贈与で受け取ったお金を、家具や家電の購入に使っても問題ないでしょうか?
この点に関しては注意が必要です。住宅取得等資金の非課税制度は、あくまで住宅の新築・取得・増改築に充てることが前提のものです。家具や家電、登記費用などは対象外となります。
仮に「頭金に1000万円を使いました」と申告しても、実際には一部を別の用途に回していた場合、税務調査で問題になる可能性があります。資金の流れは通帳などで明確に残しておくことが大切です。
なお、贈与税の申告は翌年2月1日から3月15日の間におこなう必要があり、非課税の適用は申告をしないと受けられません。税金がゼロだから関係ないと思い込まず、必ず申告するようにしてください。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ)
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう 。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。