宝塚歌劇団花組トップスター・永久輝せあ主演のドイツ発ミュージカル「Goethe(ゲーテ)!」が1日、大阪・梅田芸術劇場で初日を迎えた。
ドイツ国内のメジャーミュージカルを手掛けるチームが制作、ドイツの気鋭クリエーターたちによって創り上げられた新作ミュージカルで、2021年夏に初演され、ドイツミュージカルシアター賞で3部門を受賞した作品。秀逸な音楽が紡ぎ出すドラマティックな愛の物語を、宝塚歌劇団が日本初上演した。
ドイツの文豪ゲーテが、彼自身の恋を綴った「若きウェルテルの悩み」の誕生にまつわる、若き日のゲーテのロッテへの恋を軸に、作家としての悩みを描いた。アップテンポな音楽と、ゲーテの作品から言葉引用した歌詞が、ロマンティック世界に誘う。東京公演は終了し、永久輝を中心にさらに練度が他界作品に仕上がった。
タイトルロールのゲーテを演じた永久輝は青春の疾走を見事に演じた。若さ故の自分への自信や傲慢さ、そして苦悩。ロッテとの突き進む愛と挫折を、繊細にそして情熱的に演じ、表情の一つ一つが意味を持ち、苦悩多き青年役は永久輝の真骨頂。全編ほぼ歌と言っていいほど、歌の分量も多く、耳慣れなかったであろうジャーマンポップの曲を見事に歌いこなし、客席に感動を届けた。
ヒロインのロッテ役の星空美咲は得意の歌にますます磨きがかかり、二幕の終わりはまさに絶唱とも言うべき魂の歌声。永久輝との声の相性もよく、等身大の役を生き生きと演じた。
ゲーテとロッテが陽の恋であるのに、聖乃あすか演じる友人ヴィルヘルムと人妻マルガレーテは影の愛。聖乃は繊細な役作りで、ゲーテとの友情を明るく育み序盤から、人妻との道ならぬ恋にはまっていき、壊れていく様は胸を打つ。宝塚らしい陰の表現が秀逸だった。
マルガリーテを演じた美空真瑠は三拍子揃った男役だが、今回は妖艶な女役に挑戦。男役としては可愛らしいタイプだが、今回はいわゆる男役が演じる女役感といったものは一切無く、見事な美女ぶり。いつもとは違った高音域を響かせ、実力を見せた。
またロッテの未来の夫・アルベルト役の侑輝大弥が大役を堂々と演じ、その美貌が生き、役の頑なさを表現。前回の花組新人公演で初主演を務めた夏希真斗が「ファウスト」に登場する悪魔メフィストフェレスを演じ、歌と存在感で場を支配していた。
また初日を前に行われた会見では、膨大な楽曲と難しい譜面と格闘してきた永久輝は「素晴らしい作品というのはもちろん、宝塚人生において素晴らしい稽古場でした」と振り返る。「この作品の世界が味わったことがないぐらい大きくて、最初は戸惑い、作品世界に自分が入るとことに苦労しましたが、役を通してこの人が味わった感情を全て、私の体を持って体感できるということに幸せに感じています」と笑顔を見せた。またブロードウエイやフレンチ、ウィーンミュージカルを上演してきたが、ドイツ発のミュージカルの魅力を「華やかというより、すごく人間的で自然」と表現した。また星空に対しても「2幕の別れでの星空の絶唱、ほとばしる感情はこれまで見たことがなくて、ゲーテとしても、私としても心が動かされた」と目を細めた。
星空も「永久輝さんから頂いた言葉が、ゲーテの言葉に近しいものがあって、私にとってすごく生きる力になっています。永久輝さんの曲を聞いているだけで、とても美しく繊細で、全ての瞬間を閉じ込めたいくらいです」と全幅の信頼を寄せていた。
またドイツから来日したオリジナルプロダクションの音楽スーパーバイザーのセバスチャン・デ・ドメニコ氏は初観劇し、女性ばかりの劇団ということで「音域を女性用に仕立て、正直どんな音楽なるのか想像できなかった。だけどより豊かに、よりたっぷりと、より感情を揺り動かされた」と感動を言葉にしていた。