ふだんはイタリア食堂だが、1~2カ月に1回、ラーメン店に早変わり。その名も「イタリア食堂の間借りラーメン屋」。大阪市都島区のイタリア食堂「イル セルペンテ」、今年4月から不定期に間借り営業している。
店主は、6年間有名ラーメン店で修行し、店長まで務めた西嶋晋さん。一昨年から、間借り先のイタリア食堂で働いている。「高校のころからラーメンの食べ歩きをして、大学の頃は年間500杯は食べていた」という生粋のラーメン好きだ。だがコロナ禍で人生設計を見つめ直し、「ラーメン以外の技術を身につけたい」とイタリアンの世界に飛び込んだ。
ラーメン業界とは一旦、距離を置いたはずだが、勤務先のイタリア食堂のオーナーが結婚式で1日店を休むことになり「何かやってみる?」と1日限定での間借りの話が出たことで、「何が出来るかを考えたとき、やはり自分にはラーメン」と立ち戻った。最初に営業したのは4月19日。以後、1~2カ月に1回の不定期営業している。提供するラーメンは、毎回違う。煮干ラーメン 、豚清湯醤油ラーメン、昆布水のひやひや塩つけ麺、丸大豆しょうゆラーメン…。イタリア食堂で腕を磨いている最中とあり、通常のラーメン店とは一線を画す。
「ラーメン屋って、あまり季節感はありませんが、うちはなるべく季節を感じさせるものをトッピングするようにしてる」といい、これまでもホタルイカを使ったこともある。「イタリアンを前面に出したイタリアンテイストにはしたくない。だけどこの店で培った技で、トッピングにも一手間掛けています」という。例えば9月のトッピングは、豚ロースの低温調理、九条ネギ、舞茸アーリオオーリオ。「通常のラーメン屋のトッピングだと、香油を使うだけですが、うちは油にニンニクの香りをつけて、舞茸のアーリオオーリオです」と手間暇を惜しみなくかけている。
さらに「味付き替え玉」も人気。通常の替え玉でなはく、単品でも食べられ、1杯目のラーメンのスープに入れて味変もできるもの。東京で流行っている「和え玉」をリスペクトし、「味付き替え玉」の名前で提供している。メインのラーメンよりも、「むしろこちらの方が、イタリアン要素は強いですね」という拘りの品になっている。
9月に提供した「味付き替え玉」はビーゴリインサルサを元に作った。ビーゴリインサルサとはイタリアのヴェネト地方の郷土料理で、太麺を玉葱とアンチョビで和えたもの。これを和テイストに落とし込み、ラーメンに合うように仕立て上げ直した。1杯目のラーメンスープに入れてもよし、そのまま食べてもよし。バリエーションが広がる一品となっていた。
4月の第1回営業時は「以前勤めていたラーメン屋の常連さんがほとんどだった」というが、開催を重ねるたび常連以外の客も増えてきた。昼と夜の営業に分けているが、1日2回食べに来てくれる客も現れるほど。毎回、提供されるラーメンが違うため、楽しみも大きい。
そんな「―間借りラーメン屋」の次回の営業は10月22日。通常のイタリア食堂の閉店後に、いろいろと試行錯誤を重ね、仕込みをしている。「毎回何にしようかと悩んでます。次回も少しでも喜んで頂けるものにします」と目を輝かせた。