イスラム教徒でも食べられるラーメン「ハラールラーメン」を出す店が増えている。多くの外国人観光客でごった返す大阪の繁華街・道頓堀で14日、ハラールラーメンの新店「Marhaba!(マルハバ!)」がオープン。TikTokなどで店を知った外国人観光客が詰めかけた。なぜ今、日本でハラールラーメンなのか。狙いなどを聞いた。
共同オーナーで、店をプロデュースした山本大介さん(49)は、同じ大阪の繁華街・千日前でオムライス専門店「DEARBROS.」など5店舗を持つ。ハラールラーメン店を出店した意図について「道頓堀は外国人の方が多いのと、世界全体でイスラム教の方が25%、4人に1人いるんですよ。ここに対応していないのに、観光地として日本の食を広めていくというのは、4分の1の人を無視してるってことになる。同じ味で提供できるなら、絶対対応した方がいいと。味が変わるわけじゃないんで」と語った。
ハラールラーメンとは、イスラム教徒が食べられるように対応したラーメン。「豚骨とか、豚は使えない。あと、アルコールが入っているのでみりんと料理酒は使えない」(山本さん)と、イスラム教の教えで口にすることが禁じられている豚肉やアルコールを使わず、ハラール(食べることが許されている食事、料理)に沿ったラーメンを指す。
山本さんは「ハラールの鶏がら、あとは魚介類ですね。貝柱だとか、アサリだとか、煮干しとか。醤油も、アルコールを添加しない本物ならOK」とハラールラーメンのだしを説明。「具材でのせる和牛も、ハラール和牛。日本で、戒律にのっとって処理しただけです。皆さんが食べているA5ランクの黒毛和牛そのまま。だから味は全く同じ。全く同じどころか、最高級のものしかやっていない。うちは世界最高のハラールラーメンを作っています」と自信を見せた。
渡米した際、街中にハラールフードが当たり前にある現状を目の当たりにしたという山本さん。「ラーメンもいっぱいあるんですけど、日本人がやっているのといえばとんこつラーメンばっかり。イスラム教徒は食べられない。鶏白湯をやるにしても、みりんを使ったりとか、豚のチャーシューのせたり。その時点で、イスラムの人は一人も行けない。食べるものの中に、ラーメンが入っていない。これはあかんな…と思って、自分が鶏白湯を作るのが得意だったから。絶対ハラール対応したものにしようと思った」ときっかけを振り返った。
将来的には、ハラールラーメン店を米国進出させたいとの目標を語った。「アメリカ国内でイスラム教徒が1億人ぐらい…日本の人口に匹敵する。しかも(ラーメンの)売値は日本の3倍くらい。やっている人がいないんで、絶対やろうと。世界には20億人イスラム教の人がいる。日本と同じ味で、その方たちにも食べられるものをした方がいい。アメリカを皮切りに、世界中に出していきたい。もっと多くの世界の人たちに、日本のおいしいものを食べられるようにしたい。とんこつラーメンだけはどんだけおいしくても、食べられない人が20億人以上いる」と訴えた。
「マルハバ!」のラーメンは醤油鶏白湯、塩鶏白湯の和牛ラーメン(税込2880円)、スパイシー和牛ラーメン(同2980円)が主力。すき焼きとローストビーフを敷き詰めた肉ざんまい(同5980円)もある。日本での一般的なラーメンに比べると割高だが「ハラールラーメンをつくるのは難しい。食材が手に入らない。ハラールの鶏ガラ、和牛を生産している方がとにかく少ない。しかも、すごい高い。日本人からしたら絶対高くなる。最高級和牛として考えたら安いんですけど、ラーメンとして考えたら高い。もし、同じクオリティでアメリカで売った場合、1万円は絶対超える。ハラールラーメン屋の中では安い方」と強調した。
イスラム教徒が多い東南アジアからの観光客を見据え、店構えをアジアの屋台風にした。山本さんは「アメリカで日本食を広めていきたい。ハラール対応したラーメンだとか、ビーガン対応した日本食とかって全く足りていない。日本のものをハラール対応してるものが、世界に本当に少ない。この味をできるだけ、今まで食べられなかった人にも、食べられるようにしたものを広めていくことに人生を使おうと思っています」。
屋号の「マルハバ!」は、アラビア語で「こんにちは」を意味する。「こんにちはって言われて、嫌な気をする人はいない。今から初めての方に会うわけなんで、その方に最初に言う言葉はこれかな…と」、ハラールラーメンを通して世界を見ている。