仕事を終えた平日の夜や休日を、家族サービスとして時間として使う夫がいる一方で、趣味に時間を費やし家事や育児に無関心な夫もいる。帰宅すると部屋にこもってしまい、子どもの食事、入浴、寝かしつけといった育児は完全に無視。
確かに趣味は個人の自由であり、尊重されるべき権利であるものの、家庭を持ち親となった以上、そこに「責任」は伴わないのだろうか。育児よりも趣味を優先してしまう夫の心理や、対処する妻の心境について夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞いた。
ーなぜ育児よりも趣味を優先してしまうのでしょうか
大きく分けて2つの理由があると考えます。まずは、「家事や育児は女性の仕事」という旧態依然とした価値観です。共働きが当たり前の時代になったとはいえ、男性の中にはいまだに「男は外で働き、家では休息するもの」という意識が残っている人がいます。「稼いできているのだから、家でくらい好きなことをさせてくれ」と考える夫にとって、育児は自らの責任範囲の外にあるのでしょう。
一方で、父親としての役割に対する戸惑いを抱えているケースも考えられます。特に、第一子が幼い場合、どう接していいか分からず、戸惑いから育児を避けてしまう男性はいます。また、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを重視する価値観に慣れた現代人にとって、子育ては面倒で骨の折れる作業と映りがちなので、避けたいと思う側面もあるのでしょう。
ー変わらない夫に妻はどう接するべきでしょうか
残念ながら、夫を一瞬で変える魔法の言葉や方法は存在しません。家出をするなどのショック療法も、一時的な効果はあっても持続性はなく、根本的な解決には至らないでしょう。
諦めずに自分の思いを伝え続けるしかありません。ただし感情的にコントロールしようとするのではなく、「父親として、あなたはこの家庭に必要な存在なの」というように相手を尊重するメッセージが大切です。休日での食事は一緒にとるなど、ご家族一緒の時間を過ごしてください。
ー期待せずに諦めるのは有効でしょうか
「稼いでいるのは俺だ」と主張する夫には、前述の対応では変化が期待できないかもしれません。その場合は、逆に稼いでもらうことに集中してもらい、食洗機や乾燥機付き洗濯機のような家電を買ってもらい、家事の負担を減らすという方法もあります。
夫の協力という不確実なものに期待してストレスを溜めるより、確実な解決策に投資する方が、妻の精神衛生上よほど良いでしょう。
ー離婚も視野に入れたほうがいいのでしょうか
いきなり離婚を切り出すのは早計です。夫の心理を理解しようと努め、伝え方を工夫し、便利家電にも頼った。それでもなお、夫が父親としての役割を完全に放棄し、妻へのリスペクトのかけらも見せないというのであれば別れたほうがいいかもしれません。
ただし、忘れてはならないのは、夫婦は不完全な人間同士の共同体であるという点です。互いが不完全であることを認め、尊重し合うために、一人で抱え込まず、専門家などの第三者に相談することをおすすめします。
◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー。
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。