「ONIGIRI」として海外から注目されている日本の「おにぎり」。国内でも専門店が増え、人気店には行列ができている。そんな「おにぎりブーム」を背景に、年間約2000個のおにぎりを食べ歩き、自身のオリジナル商品を販売している女性タレントがいる。その歩みと共に、高騰によって社会問題化しているコメの〝結晶〟である「おにぎり」の魅力を聞いた。
2000年代にグラビアアイドルとして活躍した小阪由佳(39)が社長を務める芸能事務所「Cheer Lead(チア・リード)」に22年から所属する黒井悠未(26)。1999年生まれの東京都出身で、おにぎりに目覚めたのは高校1年生の時だった。
黒井は「体調を壊してベッドから起き上がれなくなり、ご飯が全く食べられない時期に、祖父の実家がある福島県に家族で行って、旅館で出てきた炊きたてのご飯をひと口だけ食べたんです。それがあまりにもおいしくて、おかわりした。会津のお米とお水を使って、土鍋で炊いたご飯。つやがあったのと、食べた瞬間の湯気と甘みがおいしかった。それが私の原点です」と振り返った。
健康状態も改善し、米国の大学に進学。親日家のホームステイ先で「日本の良さ」を伝えられたことも〝コメ開眼〟をさらに後押しした。コロナ禍で予定より早く帰国し、昨年から本格的に〝おにぎり活動〟を始めた。
現在、漫画家でタレントの浜田ブリトニーが東京・浅草で営む漫画ギャラリーレストラン「オカオカ本舗」の店頭で土日祝日に着物姿でおにぎりを販売。〝おにぎり娘〟と称されている。
「1日60~70個くらい、1人で全部やっているので、始発の電車で浅草に来て早朝から握っています。ヨーロッパの方が一番興味を示してくださって、あとはアメリカ、カナダの方など。紅ショウガのおにぎりは『色が桜みたい』ということで『サクラ・ジンジャー』と呼ばれています」
現地で実食した。もっちりした米にマッチした紅ショウガのさわやかさが口内に広がる。他の3種は大豆製のソイシート(3色)を海苔の下に入れ、「日本文化を発信したい」という思いを込めて着物を模したスタイルに。赤は梅、黄は鮭、緑はすき焼き風味の鶏そぼろ。この日の米は福島・西会津産、梅は海外のビーガン(完全菜食主義者)に向けた具材でもあり、キクラゲや昆布などに替わる日もある。
黒井は海外での認知度についても解説した。
「アニメによく登場する食べ物として知られ、例えば『千と千尋の神隠し』のシーンを『これ、オニギリだよね』と私に見せてくれたりします。以前、渋谷で海外から日本にこられた方々にアンケートを取ったのですが、『オニギリ』という言葉の認知度は100%でした。また、(世界的ブランド)フェンディは『オニギリ・バッグ』を発売。第1弾がバゲット(フランスパンの一種)で、第2弾に選ばれたのがオニギリというくらい、海外でも当たり前に認知されています」
黒井は専門店についても語った。
「お米や具材など、お店ごとに違うこだわりがあり、それを知るのが楽しくて全国を食べ歩いています。広島の『むさし』は出汁が効いていいですね。新潟の『ファームフロント』はギネス最高米と言われる南魚沼のおいしいおコメにこだわった『塩むすび』が食べられるお店。京都・銀閣寺の近くにある『青おにぎり』は心が洗われるおむすびを作られている。東京では大塚の『ぼんご』が有名で、卵黄の醤油漬けが人気。並ぶ価値があります」
こうした「おにぎりの魅力」について、黒井は「かぶりつく楽しさが根底にある」と指摘。形は「三角が好き」という。「おにぎりの起源は弥生時代になるんですけど、山を神様だと思って、その山型に見立てた三角形のおにぎりを食べることで神様と結ばれるといわれるほど神聖なものです」。健康面で白米を敬遠する人もいるが、黒井は「私は基本的に白米です。確かに糖質が多いというのはあるんですけど、適切な量を食べていれば健康的だと思います」と補足した。
そして、究極の原点は「湯気」にある。黒井は「湯気を食べていただきたいです。テイクアウトは冷めても美味しいものにしていますが、その一方で『炊きたての湯気を包んで食べられる塩むすび』を提供するイベントもやっています」と意欲的だ。
おにぎりは「湯気を食べる日本のソウルフード」。コメの動向が注視されている今、改めてその存在感が高まっている。