即席めん大手「エースコック」は常識にとらわれない自由な発想で商品を生み出し、ときにその独創性で世間を驚かせている。最近も、誰もが食べたことがある“あの麺”を再現した新商品でネットをざわつかせたばかりの同社に商品開発の裏側を聞いた。
独創性あふれる商品の最新作は、1月末から全国で販売している「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」だ。市販の弁当の中でメイン食材の“下敷き”になっているあのスパゲティの味わいをカップめんで再現している。
同社担当者によれば、開発チームでの打ち合わせ中、弁当の話題になった際の何げない一言がきっかけだったという。「そういやお弁当に入ってる、あのスパゲティ旨くない?」。その言葉をきっかけに、どの料理の“下敷きスパゲティ”が好みかなどの論争が盛り上がった。
ここで、単に「盛り上がった」で終わらないのがエースコック。「その時に『下敷きスパゲティが好きな人は他にも絶対に大勢いるはず!』と確信し、あの美味しさをカップめんで再現したら面白い商品ができるのでは?と考えました」(同担当者)と商品化にいたった。
丸刃の太めんに、ハンバーグのデミグラスソース風に仕上げたソース。具材はハンバーグの肉片を模した肉そぼろ、玉ねぎと最小限にとどめている。ちなみに、ハンバーグ弁当を題材に選んだのは「お弁当の定番」かつ「開発担当者がハンバーグ好き」という、一般的かつ個人的な理由だ。
発売後の反響は「『再現度がすごい!』というありがたい声や、具材の少なさをご指摘いただく声などもあります」と賛否両論さまざま。なかには、実際にハンバーグを乗せて食べたという人もいたという。総じて「さまざまなご意見はありますが、それぞれが楽しんでくださっているのはポジティブに捉えております」とした。
ピンポイントな商品開発を支えているのは“やりすぎOK”の信念。以前、よろず~ニュースの取材に「当社では商品開発の考え方の一つに『やりすぎぐらいがちょうどいい』というものがあります」と明かしている。
やりすぎて商品化まで至らなかった案も数知れず。断念した商品案の具体例は「企業秘密」としたが、「今回のように皆さまが知ってる『あの味』をカップめんで再現しようと試みましたが、何回試作しても、どうしてもオリジナルの味わいとの差が埋まらず、開発を断念して悔しかった思い出があります」と振り返った。
同社のスローガンは「Cook happiness」。「おいしい しあわせ つくりたい」という意味だ。同担当者は「これからもこの理念に基づき、皆さまが思わず笑顔でハッピーなれるような商品開発を目指していきたいと思います」とコメントした。