韓国の食卓に欠かせないソウルフード「キムチ」。中でも定番の「白菜キムチ」がいま、気候変動の脅威にさらされている。韓国の研究者や農家、製造業者によると、主原料となる白菜の品質や生産量が低下しており、看過できない状況だという。
キムチ用の白菜を半世紀以上にわたって栽培するキム・シガプさんは、劇的な変化を肌で感じている。「気候危機が近づいていると感じる。兆候はたくさんある。代表的な例を挙げるとすれば、太白市の梅峰山。高原白菜の原産地とされている。だが、高温で土壌病害やウイルスが増え、栽培面積が半分に減った」
白菜は高冷地を好み、気温17~21度での栽培が理想的とされる。国内生産量のほぼ全てが栽培されている江原特別自治道では、夏季の平均気温が25度近くまで上昇。最高気温は30度を記録する日もある。
政府データによると2000年代以降、高温や不安定な天候により白菜の作付面積は半分以下に減少。農村振興庁の気候変動シナリオでは、25年後にはわずか40ヘクタールほどに縮小し、2090年までには高地で栽培できなくなると予測されている。
キム・シガプさんは「気候変動による影響で、生産コストは確実に増加している。病気や害虫の影響を受けやすく、有効な農薬などを散布し続けなくてはならない」と話した。
研究者らは、暑さや病気に強い白菜を開発し、影響を抑えようと試みている。国立食糧科学院の植物病理学者イ・ヨンギュ氏は「気温を下げる散水方法の研究を進め、新たに増加する立ち枯れ病への対策を広げている。高地のように傾斜の多い環境に適した栽培方法も研究している。温暖な環境でも育つよう、白菜の品種改良にも取り込んでいる」と説明した。
韓国のキムチ産業は近年、輸入品との競争に苦戦している。キムチ輸入額は今年1ー7月に約9800万ドル(約141億7000万円)にまで到達。昨年からおよそ7%増加した。特に中国からの安い輸入キムチは、多くのレストランなどで提供されている。気候による影響が、“韓国の食卓”に追い打ちをかけている。