2023年10月に薬物使用が疑われ、警察から3度目の調査を受けた後に死去した俳優のイ・ソンギュンさん(当時48歳)の警察の捜査が、事実上終了する見通しだと22日、韓国メディアが報じた。
警察や法曹業界によると、同事件に関与した人物のうち、警察が検察に送検した被疑者は計5人だという。この中には、麻薬投薬の疑惑とともに、イ・ソンギュンさんに対し3億ウォン(約3000万円)を恐喝した疑いのある風俗店の女室長と、その女室長に麻薬を渡した医師などが含まれている。
仁川(インチョン)地検は送致した5人のうち、風俗店の女性室長とその知人、医師の3人を起訴、風俗店の女性スタッフと作曲家はそれぞれ、ソウル中央地方検察庁と京畿(キョンギ)道安養(アニャン)支庁に引き渡され、捜査が続いている。そして残りの6人に対しては、処分結果が公開されておらず、今後も公開しない方針だと明かした。
韓国メディアの聯合ニュースは、捜査機関出身のある弁護士の意見として「もし今回の事件の捜査がうまくいき、捜査過程で特別な批判を受けなければ、警察はこれまでの慣例通り、騒々しく記者会見を行っただろう」「捜査が尻すぼみに終わり、多くの批判を受けたため、最終的な捜査結果を発表しないものとみられる」と伝えている。
イ・ソンギュンさんは「パラサイト 半地下の家族」に出演したことで知られる俳優。昨年10月に薬物使用が疑われ、尿による簡易検査および毛髪・爪などを含む体毛全ての検査結果で“陰性判定”が出たにもかかわらず、警察から3回にもおよぶ取り調べを受けていた。そして同年12月27日、妻であり女優のチョン・ヘジンから「夫が遺書のようなメモを残して家を出て行った」と警察に通報があり、同日に遺体で発見された。
この悲劇を受け翌年1月、「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督をはじめ、韓国著名人2000人あまりが賛同した「故イ・ソンギュンの死と向き合う文化芸術人の要求」の声明文を発表。「関係者たちの徹底した真相解明を求める」と訴え、波紋を広げた。
イ・ソンギュンさんの死亡により、事件は不起訴処分で終結。その後警察は、捜査過程における過剰捜査について多くの非難に直面した。また、仁川警察庁所属の警察官が、捜査に関する内部文書を外部に漏らした事実が明らかになり、当該警察官は現在、裁判を受けている状況だ。