火星に生命は存在するの?国立天文台の研究者が解説 大量の酸化マンガン発見で見えてきた可能性

深月 ユリア 深月 ユリア
火星
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 火星はかつて地球に類似した環境で、生命が存在していた可能性もあるという説があった。米航空宇宙局(NASA)がこのほど、注目の発表をしたことを受け、ジャーナリストの深月ユリア氏が国立天文台(東京・三鷹市)の研究者に見解を聞いた。

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 数十億年前の火星には水があり、生命も存在していた可能性が指摘されてきた。

 宇宙や超常現象などの謎をテーマにしたニュースバラエティサイト「カラパイア」などによると、「過去と現在の火星での生命を維持できる可能性について調査する」ことを目的としたNASAの探査車「キュリオシティ」が数年間にわたり火星のゲールクレーターを調査したところ、堆積物に多くの酸化マンガンを発見し、5月1日に研究論文が発表されたという。マンガンの酸化の過程に関して、一説には「かつて火星にはマンガンを酸化させる酸素が存在したのではないか」「微生物などの生命が存在していたのではないか」という可能性が示唆されている。

 かねて火星には洞窟やピラミッド型の岩石も発見されている。それらが、「火星の古代文明の痕跡ではないか」という都市伝説がささやかれてきたが、ひょっとしたら、太古の火星が地球に類似した環境であった可能性も否めないのではないだろうか。

 国立天文台自然科学研究機構の堀安範氏に取材した。

 堀氏は今回のNASAの発表について、「『キュリオシティ』は火星の岩山を登っていくようにして砂の成分を探査・分析しているので、酸化マンガンが発見されたことは、後の研究で覆ることのない事実でしょう。実は酸化マンガンは過去にも発見されていますが、今回の発見で画期的なのは、ある場所で『大量の酸化マンガンが発見された』ということです」

 堀氏は驚くべき考察をした。

 「『大量の酸化マンガン』が発見されたことにより、一つの可能性に過ぎませんが、地球に類似した環境だったという仮説がたてられるのです。25億年前、太古の地球に一気に酸化マンガンが大量に発生した時代がありました。その酸化マンガンは南アフリカで発掘されていますが、同時期、大気中の酸素の濃度が急激に増えて、マンガンが酸素と結合したといわれています。そして、30億年以上、火星のゲールクレーターはおそらく湖だったといわれています。火星の地下水にマンガンが溶け込み、酸素と結合し、湖に流れた可能性があります」

 かつての火星が湖と酸素に満ちた環境だったならば、やはり生命も存在していた可能性もあるのではないか。現在も生命が存在している可能性もあるのか。

 「現在の火星では生命は発見されていませんが、今回の『大量の酸化マンガン』の発見により、かつて微生物が存在していた可能性が指摘されています。地球の場合、マンガンの酸化が酸素との結合によって行われる場合と、微生物によって行われる場合とがあります。前者の場合、酸素は藻類の光合成により生成されます。後者はマンガン酸化細菌(微生物の一種で、無機物の酸化により生ずるエネルギーを用いて二酸化炭素から有機物を合成する働きをする)というマンガンを酸化させる微生物が存在します。ひとつの可能性として、そのような微生物が存在していた、という説は指摘されています」(堀氏)

 次々と明かされる火星の環境に関する驚くべき新発見。次はどんな事実は明るみになるのか。

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