粗品は大の「カイジ」ファン。5月12日まで開催中の「逆境回顧録 大カイジ展」(東京ドームシティ・ギャラリー アーモ)のオープニングセレモニーでは、作者の福本伸行氏と初対面し、感激と興奮を隠さなかった。原画とともに「限定ジャンケン」「鉄骨渡り」「焼き土下座」「沼」などをモチーフとしたフォトスポットが満載。福本氏は企画に直接関わっていないことを知らされた粗品は、「考えたのはオモロイ人ですね」と感心。福本氏から創作裏話をたっぷり引き出した。今回の取材中も「本当に楽しかったですね」と振り返ったほどだった。
そんな福本氏の「カイジ」に並ぶ代表作、「アカギ」の金銭哲学からも、粗品は影響を受けたという。巨額の金、命のやり取りもいとわない天才雀士アカギ(赤木しげる)の勝負が描かれた名作。「アカギが1回ギャンブルの世界から足を洗って工場で働いてるとき、先輩のイカサマ麻雀でたかられる後輩の敵を討って、お金を手にした時、おもちゃを見るような目でお金を見ていた場面。そういう金に執着のないところ。そこはアカギへの憧れがありそうですね」と、作品への思いを口にした。
世間では投資がもてはやされ、芸人でも投資を学び、堅実にお金を増やそうという機運に対しても背を向ける。「しょうもない芸人やなと思います。株、FXに興味はありますが、『カイジ』の世界のようなパチンコ、そして競馬という王道がある。ギャンブルとして煙たがられるものこそ、面白いですね。(投資を)失敗してほしいですね芸人なら」。笑いに昇華される大敗の価値を口にした。
粗品は芸人の4大欲望として「食におぼれる」「色におぼれる」「酒におぼれる」「金・ギャンブルにおぼれる」を挙げた上で、持論を語った。そこには「マネーエンタテインメント」の行方、芸人としての自負心をも垣間見せたように感じた。
「ギャンブルが一番健康的。最高だと思います。ギャンブルだけが、言葉で形容できないエグみがある。脳汁が出る。
M-1を優勝した後、ちょっとギャンブル系のものまねをした時、今まで窮屈やったギャンブラー層の熱い応援と反響を感じたんですよ。徐々にやっていって、ネットでめっちゃ数字が取れるようになった。それにテレビとか他媒体が気づいて、ギャンブル系のクズ芸人ブームになりました。
やっぱりね、ギャンブルというのは芸としても今や王道です。それでいうと、正直今、まがい物のギャンブル芸人とか、まがい物のクズ芸人が増えすぎている。そいつらを全員、ぶっ倒さなあかんなと思ってます」
粗品は終始、自己責任、個人としてのギャンブル論、金銭論を語り続けた。この考えを一般化させるつもりは一切なさそうだ。孤高の芸人としての誇りすらを感じさせ、熱いギャンブル愛を隠さなかった。