トイレット・ペーパーを巡るトラブルが家族の間では起こりがちだ。使い過ぎてトイレが詰まる原因になったり、ペーパーの消費が早くて不経済だ…などと理由は様々。その中でも、残り少ないペーパーを放置して交換しなかったため、家族から非難されたケースを例に挙げ、「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を提言した。
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【今回のピンチ】
自宅トイレでペーパーの残りが微妙な長さだったが、面倒なのでついそのままに。次に入った妻に「信じられない!」と烈火のごとく怒られた。どう言って許してもらう?
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人生には、たくさんの落とし穴があります。ふとした拍子に心の隙に入り込む「面倒なのでつい」という感情が、大きなトラブルを招くケースも少なくありません。
いつもは、早めに新しいペーパーに取り替えてはいました。しかし、急いでいたのと考え事をしていたのと、いろんなことが重なって「ま、いっか」とそのままに。あとで考えると愚かな判断でしたが、案の定、妻の激怒という大ピンチを招いてしまいます。
「信じられない! あなたはいつもそうやって私にすべて押しつけて、やってもらって当然だと思ってるよね。自覚ある!?」(妻の罵倒の一部を抜粋)などと、これでもかというほど非難の言葉を投げつけられました。
もちろん、悪いのは自分です。妻の激怒は十分に予想できたはず。しかし「面倒なのでつい」の誘惑に負けてしまいました。許してもらうには、どうすればいいのか。
絶対にやってはいけないのは、逆ギレです。「うるさいなあ、細かいこと言うなよ!」「使いたいヤツが取り替えればいいだろ!」と言ったら、火に油どころか火に火薬。世にあふれる「冷めた関係の夫婦」は、こうしたことの積み重ねでできあがっていきます。
「いやでも、あの長さがあれば、もう一回は大丈夫かなと思って」と、取り替えなかった理由を説明するのも、かなり危険。怒っている妻には、姑息な悪あがきにしか聞こえません。そもそも後付けの理由なので、たしかに姑息な悪あがきなんですけど。
ここは「ごめん。どうかしてたんだ。己のバカさ加減に、つくづく呆れたよ。本当に申し訳ない」と、自分を責めつつ平謝りしましょう。そうやって妻を落ち着かせた上で、
「怒ってくれてありがとう。あらためて、きちんと生きなきゃと自覚することができた。ぼくは素晴らしい妻をもって幸せだ。ぼくは死ぬまでキミを離さないぞ、いいだろ」
このぐらい念入りに感謝しつつ、加山雄三ばりのセリフで愛を伝えれば、それ以上の罵倒は回避できるでしょう。
平謝りも念入りに感謝するのも、頭ではそうしたほうがいいとわかっていても、なかなかできないかもしれません。しかし、夫婦の未来を左右する重大な局面なので、がんばって勇気を振り絞りたいところです。
仕上げとして「ぼくとしては、トイレットペーパーにも感謝しなきゃね。カミさま、ありがとうって」と付け加えるのも一興。笑ってもらえるか呆れられるか、それもまたカミのみぞ知るところです。