スターダムの後楽園ホール大会が10日に行われ、羽南(19)はシンデレラトーナメント2回戦で10分17秒、史上初の大会3連覇を狙うMIRAIからバックドロップホールドで3カウントを奪い、大きな白星を挙げた。高校卒業から1年。プロレス専念で迷いが吹っ切れた元中学生レスラーが、飛躍の時を迎えようとしている。
完璧だった。スッと持ち上げ、ゆったりと大きな弧を描いて決めた。相手の必殺技ミラマーレショックを丸め込んでしのぐと、一気にペースアップ。バックドロップ連発で難敵を撃破した。顔をクシャクシャにして喜ぶ羽南は、笑みを浮かべるMIRAIと握手を交わし、その成長を認められた。「MIRAIからバックドロップホールドでスリーを取れました。やっと勝てて本当にうれしい。もう絶対このまま私が優勝します!」。興奮を隠さず、感激を口にした。
MIRAIはシンデレラトーナメント優勝の他に、ワンダー王座、ゴッデス王座の戴冠歴を誇り、現在はアーティスト王者として君臨。羽南は「自分が欲しいものを全て持っている」と意識するもシングル対決では歯が立たず、一方でMIRAIから各メディアで度々自身への期待の言葉を受けていただけに、強く意識する存在だった。
今トーナメントには、これまでにない手応えがある。「精神的、勢いが自分の中で一番マッチしていて、こんないい時期はもう来ないんじゃないか、という位。だから今日勝てなかったら、もうMIRAIには勝てないんじゃないか、と思っていました。しかも、目標としていたバックドロップホールドで勝てたので本当にうれしい」。トーナメントを前に自身のデビュー以来のバックドロップを映像で見直すなど、研究を重ねた成果を出した。
昨年の5★STAR GPでAZMから初勝利した成長を認められ、続くタッグリーグで〝アイコン〟岩谷麻優と組み出場。プロレスに対する意識が変わった。「それまで自分の全力を出さないと試合はできない、と思っていました。麻優さんから『楽しんだらもっと強くなれるよ』と教わって、変わりました」と振り返った。
羽南は中学校1年生の2017年4月にデビュー。高校卒業までの6年間、途中でケガなどの欠場を挟みながらも、学業とプロレスを両立してきた。「一つに集中できない感じでした。学校でもプロレスラーと知られていたので、プロレスを頑張らないといけない。学校のことも頑張らないといけない。あれもこれも頑張らなきゃ、という思いでした。今はプロレスだけに集中できて、とても幸せです。高校を卒業して1年、たくさん学べたことがあって、それを自分のものにしたい、と高いモチベーションで試合ができていました」と、日々成長を重ねている。
その中でも大きかった岩谷の背中。「2人で組むことはあまりなかったので、麻優さんがこんなに楽しんでいるのに、私も楽しまないと、と思うようになりました」と、改めて意識の変化を説明し、「スケールが大きな話になっちゃうんですけど、人生の中で今が一番楽しくて、充実しています。特に試合が楽しくて、それ以上が更新されない状態なんです」と笑顔で語った。
肉体面でも変わった。自身のスタイルを分析し、背筋を重点的に強化した。今年からパーソナルジムに通い始めるなど、肉体面への意識がより高まった。「以前よりきれいにブリッジができている感じはあります」と手応えを口にした。
シンデレラトーナメント準々決勝ではスターライト・キッドと激突する。この日は自身の試合後、会場でキッドが鈴季すずから勝ち上がる様子を視察するほど、意識する相手。今年の1・6後楽園大会では、ワンダー王座挑戦権をかけた11選手によるランブルマッチで、最後の2人に残りながら敗れた相手。デビュー以来、しのぎを削ってきた関係もある。「いつか私とキッドで(ワンダー王座の)白いベルトをかけて戦うことが目標。まずはトーナメントで雌雄をかけて戦います」と先を見据えた。