人が「猫社員」と働く職場を直撃!社内に連帯感、取引先から好評で発注増 動物を大切にする「企業倫理」

深月 ユリア 深月 ユリア
オフィスでくつろぐ猫社員。デスクの左側、右手前のイスにその姿が見える=都内の会社「qnote」
オフィスでくつろぐ猫社員。デスクの左側、右手前のイスにその姿が見える=都内の会社「qnote」

 動物のいる職場で仕事の効率が上がることがあるという。実際に都内のIT系企業で、オフィス内で人間の社員と猫が共生している環境が報じられて注目された。ジャーナリストの深月ユリア氏が同社を訪ね、その様子をリポートしながら、これまでの経緯や仕事面での効果、その意義などについて、経営者から話を聞いた。

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 東京都杉並区本天沼、JR阿佐ヶ谷駅北口から徒歩約10分の場所に、 地下1階、地上4階の「ネコビル」と名付けられた建物がある。その2-4階では、猫たちが自由に動き回っている。といっても、「ネコビル」は猫カフェではない。

 アプリ開発やウェブ制作を手掛ける「株式会社qnote(キューノート)」が所有するオフィスビルだ。社内には8匹の「猫社員」が常駐し、「人社員」がちゃんと仕事をしているのかチェックするかのように、デスクの間を自由に歩き回っている。人社員たちは連帯で猫社員の世話をして、猫社員は人社員を癒(いや)し、うまく連携し合っているという。

 代表の鶴田展之氏(55)は自宅でも「7匹の保護猫を飼っている」という大の猫好きだ。鶴田氏にネコビルを起業したきっかけを聞いた。

 「20年ほど前に起業したのですか、当時は社員が4人しかいない小さな会社でした。ある時、4人でお寿司屋さんに行った時に保護猫の募集があって、みんな猫好きだったので、引き取ることにしたんです。それが初めての『猫社員』。その後、社員の飼い猫とお見合いして、子猫が生まれて増えたり、社員が保護した猫が増えて、今に至ります。『保護猫シェルター』みたいになりましたね」

 「ネコビル」の一階にあるカフェ「crotchet(クロチェット)」では、保護猫団体と定期的に保護猫の譲渡会も開催されている。次回は3月10日の日曜日に予定され、鶴田氏のギターの弾き語りライブと、猫雑貨販売、射的などの催しも同日に行われるという。

 古来、「猫は福を呼ぶ」という言い伝えもあるが、「猫社員」たちが常駐することで、会社に大きなメリットがあるという。

 「社内で猫を通じて連帯感、信頼関係が生まれますね。猫社員のお陰様で、20年間、頑張ってこられました。また、名刺やHPも猫のデザインになっているので、取引先に覚えられますね。『動物好きに悪い人はいない』という言葉がありますが、『親しみやすい』『法外な請求をしてこないだろう』という印象を持たれているようです。冗談だと思いますが、『猫に会いたいから仕事を発注する』というクライアントさんもいました(笑)」

 猫が癒してくれるような仕事環境なら、猫好きなら仕事もはかどりそうだが、このような会社は日本では希少だ。その理由として、鶴田氏は「猫の世話をしても給料が上がる訳ではないので、『会社は稼ぐための場所』だという固定観念があると思います」と指摘。「資本主義の競争社会では、『自分さえよければいい』というようなドライな考え方になりがちですが、企業倫理の部分で『動物を大切にする』『命を大切にする』、それによって『社会貢献する』みたいなものがあってよいかと思います。企業倫理がなってないと、ただの弱肉強食の搾取社会になってしまいますから」と見解を語った。

 昨今、企業の不祥事が相次いで報じられているが、改めて「企業倫理」の必要性が日本社会に問われる。企業が「小さな命」をも大切にするような倫理観を持つようになれば、社会はより優しく温かなものになるのかもしれない。

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