漫画家の西アズナブルさんが27日、都内で開かれたnote創作大賞2023の授賞式に出席し、投稿作品「ちかごろのわかい娘と」がコミックエッセイ部門のオレンジページ賞に輝いた。実業家のホリエモンこと堀江貴文氏の似顔絵、堀江氏が原作の漫画「刑務所いたけど何か質問ある?」、投資家・村上世彰氏の著書をコミカライズした「マンガ『生涯投資家』」など、実話系の作品で知られる西さんが応募した今作のテーマは子育て。5歳の愛娘との日常が、柔らかいタッチで朗らかに描かれ、これまでの作品とは一変した。
メディアプラットフォームで確固たる地位を築いたnoteの加藤貞顕CEOらに祝福を受けた西さんは、受賞の感想を「驚きと喜びです」と極めてシンプルに語った。愛娘との触れ合いをテーマにした今作。「創作動機は娘とのエピソードとその時の自分の感情などを忘れないように描き残そうと思ったからです。応募理由は、ちょうどそれなりに量が溜まっていたことと、タイミングよく創作大賞の募集があったこと。あとは自分がこれまで仕事で描いてきたマンガと違うタッチと内容のものが、どう評価されるか興味がありました」と経緯を語った。
ディフォルメしつつも細部は硬質な過去作品の絵柄とは異なり、今作のタッチは柔らかく〝遊び〟が感じられる。「もともと個人的な動機で描き始めたマンガだったので、仕事の合間に描ける範囲内で自由なタッチで描こうという気持ちがまずありました。その上でゆるい日常の余白みたいなものを表現したいと思い、このようなタッチになりました」と説明。プロとして長く活動を続けてきただけに「個人的な何でもない日常のマンガなので、なるべく独りよがりな表現にならないように、オチをつけるなど、読者を意識して描きました」という配慮も忘れなかった。
堀江氏と会う機会は少なく、関係者を通じて受賞を報告するというが、次の対面での反応を楽しみにしている。堀江氏といえば収監された2011年の出来事が印象深い。「収監が決まった直後、Twitterのリプライが堀江さんから直できて、『刑務所なう。』のマンガを描くことがTwitter上で決まったことです。スピード感がすごかったです」と語った。
今作を通して父娘関係に変化はあったのだろうか。西さんは「娘の仕草や言動を見逃さないようにしようと思うようになりました。それと同時にネタとして見ないようにという気持ちも。なのでなるべく自然体で接するようにしています」と語った。その一方、妻は作中には登場しない。「いちいちアップしていいか妻に確認するのが面倒だからです。結果的に父娘の関係が強調される形になって良かったのかもしれません」と笑い混じりに話した。
力まず自然体で描いた「ちかごろのわかい娘と」が切り開いた新たな境地。西さんは「この作品に関しては、娘が嫌がらない範囲で今後も描いていければと思います。その上で書籍化など何らかの形にできれば最高だなぁと思っています」と穏やかに語った。
◆西アズナブル 1976年、福井県出身。漫画家、イラストレーター。著書に「マンガ株投資入門」、「刑務所いたけど何か質問ある?」(原作・堀江貴文)など。2013年に結婚。家族は妻と長女。