大阪・日本橋のギャラリー、画廊モモモグラは29日から、早世した異能マンガ家に注目した「華倫変 没後20年追悼原画展」を開催する。2003年3月に28歳で世を去った華倫変(かりんぺん)の原画に加え、貴重なラフ画、未発表作品を含むネームなど、計70点弱を展示。同画廊のB・カシワギ代表に話を聞いた。
華倫変は1990年代末から2000年代初めに作品を発表。原画は作品集「カリクラ」「高速回線は光うさぎの夢を見るか?」から選出された。不条理と厭世観、危ういまでの無垢さが内包された作品が残した影響は、現在のマンガ家にも及ぶ。おそらく初めてだという原画展。反響は大きく、カシワギ代表は「面白そう、見たい、ではなく、行きます、という声が多い。好きなマンガ家トップ10のひとり、ではなくて、『一番好き』といった愛の深さを感じる」と驚いた。入場は無料だが、混雑時は入場制限を実施する。遠方からの来場者でもスムーズに鑑賞できるよう、無料の優先入場権を初めて用意した。
画廊モモモグラは2018年にオープンし、サブカルチャーを軸に個性あふれる展示を行ってきた。羽生生純、沙村広明、堀北カモメ、とよ田みのる、楠桂ら、特に原画の展示に注力してきた。カシワギ代表は「東京と違って、大阪で原画を見られる機会は少ない。例え作家が世を去っても、本物を伝え続けられるのが原画のすごみ。人々の目に触れる機会をつくりたかった」と話した。
愛読してきた華倫変は、画廊スタート後も「ずっとやりたかった」という存在だった。5年間運営を続ける中で知り合った編集者を通じて、和歌山に暮らす華倫変の父親と接触。図らずも没後20年の節目だった。原画展の企画が快諾された。「ご実家の蔵のような倉庫から探しました。華倫変さんは思ったよりも無邪気な、決して世の中に居場所がない人ではなかったようです。その分、優しさを感じましたね」。エキセントリックな作風とは、正反対の人柄のように思ったという。
その印象は、原画にも通じる。「才能だけで描いて、絵は荒いと思っていたが、全く違っていた。すごく繊細で迫力があり、絵がうまい。山本直樹さんに影響を受けたこともあって、女の子がかわいい」とカシワギ代表。原画のほかに発掘されたラフ画を挙げて「キャラクターをさまざまな角度から描き分けていて、相当練習されています。上達したい気持ちが伝わってきた」と続けた。
会期は5月21日まで。会場では原画展のオリジナルグッズを販売する。「バナナをアヒル」「究極タイガーボンバーナイツ」「桶の女」のTシャツ、作品のワンシーンを用いたお薬手帳カバー、複製原画、パスケース、アクリルスタンドなどが制作された。グッズのオンライン販売、優先入場権の申し込み、開館日時等の詳細は、画廊モモモグラの公式サイトまで。カシワギ代表は「第2弾もできるかもしれない。ぜひ原画展を応援してほしい」と、ファンの後押しを呼びかけた。