妊娠や出産をきっかけに職場で嫌がらせなどを受けるマタニティハラスメントだけではなく、新たに今、育児中のママさんたちが仕事で不当な扱いを受ける育児ハラスメント、通称“イクハラ”も問題になっています。子どもの突発的な体調不良や学校行事などを理由に、休暇・時短勤務などを申し出ると、あからさまに嫌味を言われたり、嫌がらせとしか思えない業務を押し付けられたりと、理不尽な仕打ちを受けるケースがあるそうです。つい最近まで、大阪の飲食店でアルバイトしていた育児ママの村本紗英さん(仮名/32歳)も、そんなイクハラを受けたと言います。どのような被害にあってしまったのでしょうか?
「みんな出勤時間の30分前に来て勉強してるよ」
育児が少し落ち着いたタイミングで、飲食店でのアルバイトをスタートさせたという村本さん。将来の夢だったカフェ経営を勉強したいと考えて、あえてこの仕事を選んだと言います。「経営の仕組みや、オペレーションについて学びたいという気持ちがありました。面接時にその気持を伝えると、オーナーさんが『ぜひ、応援させてもらいますよ』と、温かい言葉をかけてくださったので、働くことを楽しみにしていたのですが……」。
もともと料理が得意で、サービス業の経験もあった村本さんは、すぐにメニューの調理手順を覚え、お客さんとのコミュニケーションも難なくこなし、オーナーからも「村本さんに来てもらって良かった」と上々の評判だったそうです。しかし、数週間が経過したあとに、「オーナーから信じられないLINEが届いたんです」と村本さん。
「あまりにも急なことだったので、恐怖すら感じたのですが……。『勤務を開始する時間の30分前にお店に来て、業務を勉強してほしい』っていう内容を送ってきました。『将来、カフェを経営するならそれくらいの努力はしなきゃダメだよ』って。最初は、熱い人なのかと思ったのですが……たぶん、アルバイトの中で、私だけが勤務5分前に来て、仕事が終わるとすぐに帰るのが気に入らなかったんだと思うんです。アルバイトは、学生さんやフリーターの人ばかりで、みんな勤務時間に関係なく入り浸って、色んな話をオーナーとするような職場だったので」。
村本さんは、家事や育児をこなしながら働いているため、勤務時間外での出勤は難しいと伝えると、「他の人はそうやって勉強をしている。育児を言い訳に、夢をあきらめていいのか」とも言われたとか。
さすがに、頭に来た村本さんはその日のうちに退職することを伝えたと言います。「その後も、『急に辞めるなんて非常識だ』とか『育児中だからって、何しても良いと思ってるのか』って、散々な罵声を浴びせかけられました。少しでも、育児をしながら働く人の忙しさを知っていたら、こんなことにはならなかったと思うんですけど(苦笑)」。
現在、また別の飲食店でのアルバイトを探しているという村本さん。こうした出来事をひとつでも減らすためにも、経営者はもちろん一人ひとりが育児と両立して働く人の大変さを理解することが大切なのかもしれませんね!