部下からの逆パワハラ、損害賠償請求に該当する行為とは

平松 まゆき 平松 まゆき
写真はイメージです(Paylessimages/stock.adobe.com)
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 前回「逆パワハラ」が台頭しつつあるとのお話をしました。今回はどのような場合が「逆パワハラ」にあたるのか解説します。

 おさらいですが厚労省が示すパワハラの定義は「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの。」です。この「優越的な関係」は上司だけを指すものではありません。実際、部下が業務上必要な知識・経験を持っていて、部下の協力を得なければ上司が業務を円滑に遂行できない場合や、部下からの集団による行為で、上司が抵抗・拒絶するのが困難である場合もあるでしょう。

 たとえばこんな場面をイメージしてみてください。昨今のIT化の加速により、日常的に経験していないと分からない作業について上司が部下に尋ねたとします。すると、「上司は部下の仕事を把握しているべき。知りもしないのに上司って言えるんですか?」と反抗され、教えてもらう雰囲気でなくなった。仮に教えるとしても、じっくり丁寧に解説せず、猛スピードでパソコンを操作され、さっぱり分からなかった等。職場でオロオロしているおじさんの姿、気の毒ですが想像がつきますよね。

 そこで上司が注意すると、今度は「パワハラだ。SNSにアップする。」「労基署に報告する。」と脅してくるケースもあるようです。また注意をした上司だけ無視し、ランチミーティングや懇親会に誘わず、結果として円滑な意思疎通が図れないというケースも耳にします。

 たしかに部下には部下の言い分があるでしょう。しかし例に挙げた部下の言動は、いずれも度が過ぎればパワハラの定義の3要件に該当し得ます。逆パワハラは損害賠償にも値する行為です。自分の意思をはっきり伝えられる職場環境は推奨されるべきですが、「もの言う部下」にも限界はあります。平均的な労働者から見て、上司と部下、互いの言い分に合理性があるかどうかをきちんと見極め、法廷闘争に巻き込まれることにないように注意してください。

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