将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖との五冠)が19日、栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」で指された第48期棋王戦五番勝負第4局で、渡辺明棋王(名人との二冠)に132手で勝利。通算3勝1敗で棋王位を奪取し、史上2人目かつ最年少での六冠を達成した。局後の記者会見での主な一問一答は次の通り。
―棋王位を獲得した感想は。
「対局が終わったばかりで、まだ獲得できたという実感がそれほどあるというわけではないんですけど、棋王戦では前期までなかなか良い成績が残せていなかったので、今期、五番勝負まで進むことができて、その中で何とか、大変な将棋ばかりだったんですけど、結果を残すことができたのは、大変うれしく思っています」
―シリーズ全体を振り返り。
「シリーズを通して角換わりの定石型で、序盤から中盤の最初に駆けてテンポよく進むという将棋が多かったんですけど、その後の中終盤はどれも非常に難しくて、適切に判断できなかった局面も多かったと思うので、難しい局面をいろいろ考えることができたという点では、収穫の多いシリーズだったかなと思います」
―八冠独占への思いは。
「う~ん、そうですね…、いや…。う~ん、まだ直接そこを目指すという意識はありませんし、実力的にも足りないところがあると思うので、まずは引き続き、実力を少しでも高めていけるように取り組んでいければと思います」
―第3局で終盤悔しい形での敗戦。今局の差し手はいつもより慎重という印象を受けたが、第3局が糧になった部分は。
「第3局は、ちょっと中盤から自玉が思っていた以上に不安定な形になってしまって、まとめるのが難しくなってしまった。本局は玉の安全と、うまくバランスを取りながら指していければと思っていたんですけど、途中で攻め合いに行くタイミングをいくつか逃してしまったところがあると思うので、バランスというのはまだ調整が必要なのかなと思います」
―マスクのない状態での対局は久しぶり。終盤の思考などで違う感覚などは。
「自分にとっては本局から着用が任意という形になって、ある程度それに合わせてと言う風には思っていたんですけど、今までと比べて違うかというのは一概には言えないかなと思いますけど、集中して臨むことはできたかなと思っています」
―タイトル通算13期で、森内俊之九段を超えて歴代7位。
「本当に森内九段も、自分が将棋を始めたころから、特に名人戦を中心に活躍されていて、目標とする方の一人だったので、タイトル数だけでもちろん比較できることではないと思うんですが、一つ一つ積み上げてこられたことは良かったかなと思いますし、ただ、実績のある棋士の方の対局を見ると、まだまだ学ぶところが多いのかなとも感じています」
―去年の後半ぐらいから、持ち時間を残して終わる戦いが多い。タイムマネジメントの面で意識を変えたところは。
「基本的には、残り時間よりも局面の方が重要なので、判断の難しい局面があれば時間を使って納得いくまで考えたいと以前から思っていたんですけど、早い段階で使いすぎてしますと一局を通して大事なところで考えることが難しくなってしまうところもあるかなと思うので、一局を通してなるべくそれが実現できる時間配分ができれば一番いいのかなと思います。
―NHK杯も制し、一般棋戦全制覇も達成した。それでなお「実力的に足りないところ」とは。
「早指し棋戦では、今まであまり結果が出せていなかったんですけど、今期は今までより決断良く指そうということを意識して、良い結果を出すことができて、その点ではうれしく思っています。ただ、最近の中盤以降、非常に難解な局面を迎えることが多くて、考えてうまく判断できないという局面が増えているのかなという印象も持っているので、そういった複雑な局面に対しても的確に判断できる力が一層必要になるのかなと思っています」
―以前、富士山の高さに例えて自身の現在地を語っていたが、〝乗り鉄〟らしく、新幹線で名古屋駅から東京駅まで考えると、現在はどの付近か。
「はい、えっと…(笑)、それは東京が終点?そうですね。いや、う~ん、初挑戦したときから、タイトルという点では増やすことができているんですけど、やっぱり内容的には大変なところが多いので、あまり(ゴールに)近づいているという感覚はそれほどないのかなと思います。なので、どのぐらい…、じゃあ、静岡ぐらいということでお願いします(笑)」