石破茂氏が防衛問題に苦言「国民を守るつもりがあるのか」 国会で「シェルター」について質問予告

深月 ユリア 深月 ユリア
画像はイメージです(akiyoko/stock.adobe.com)
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 激動する国際情勢の中、日本における防衛問題の行方が注目されている。その課題点はどのようなことになるのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏が自民党の衆議院議員で元防衛大臣の石破茂氏に話を聞いた。

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 筆者は今月10日、石破氏をゲストに招いて「シェルターと国民保護」に関するシンポジウムを都内で開催した。20年前からシェルターの必要性を訴えている石破氏が自身の見解を述べた。

 -政府はロシアのウクライナ侵攻や相次ぐ北朝鮮による弾道ミサイル発射を受けて、昨年12月に定めた安全保障関連3文書にシェルター整備を含めるか検討しているようだが、具体的な方針は定められているのか。

 「15日の国会で岸田首相に30分間、同じ質問をする予定です。安全保障関連3文書に『国民保護』という言葉が入りましたが、『シェルター』は含まれるのか、いつまでにどれくらいの予算をかけるのか質問します。 『いつまでに成案を出すか』決めなければなりません。5年前にも(国会で)『世界中のシェルターの状況について調べてきてください』と言いました。半年もあれば十分なはずなのに、何も調べられていません」

  ―シェルターの予算を割り出すにも日本には国と地方をあわせて1200兆円以上の借金(国債)がありますね。

 「『いくら借金しても問題ない』という人たちがたくさんいますが、『お札をいくらでも刷ってもよい』となればハイパーインフレが起きます。お金を借りている人は得して、お金を貸している人が大損する、ということになります。私は消費税には賛成ですが、消費税を取り入れた頃(1989年)は今の日本社会ほど格差がありませんでした。しかし、今の日本の税制は大企業やお金がある人に甘く、中小企業やお金がない人に厳しいものになっています。利益を受けた人がより多くの税金を払うべきではないでしょうか」

 ―なぜ今までシェルターについて国会で真摯(しんし)に議論されなかったのか。

 「日本は太平洋戦争の反省をしていないからだと思います。なぜ、東京大空襲で一晩で10万人も亡くなったのか、アメリカが不思議に思って調べたのです。大日本帝国には『防空法』という法律があり、『空襲があったら市民は逃げてはならない、火を消さなければならない』というものでした。政府は国民を守るつもりがなかったのです」

 ―国民保護は多くの国では国防省が受け持っていますが、現在の日本はなぜ総務省(消防庁)なのか。

 「現行法では有事には自衛隊は市民を守りません。なぜなら、敵が攻めてきた時に市民を守りながら戦うということは『二兎を追うものは一兎も得ず』で、(太平洋戦争の)沖縄では部隊が全滅して多くの市民が犠牲になりました。現行法では有事に国民を守るのは警察の役割になりますが、そうなれば日頃の警察の役割に穴が空くので総務省(消防庁)が担っています。20年前に(政府内で)この議論をしましたが、国民を守る役割を防衛省が担えば、日本には『民間防衛組織』がないので『市民に銃を持って戦え』という風に話が飛躍してしまいました。『民間防衛』とは『市民が銃を持って戦うこと』ではなく、大概の国には『民間防衛組織』があります」

 ―先月末に岸田政権はNATOと会談しました。仮にNATOに入ることがあったとして、日本にメリットはあるのか。

 「現在、日本はアメリカとしか同盟を結んでいません。日米同盟はアメリカは日本を守る義務があるが日本はアメリカを守る義務がないというものですが、アメリカは自分のためにならない限り、日本を守らないのではないでしょうか。どの国も日本を守ってくれなくなる、という状況は本当に大丈夫なのか、考えるべきだと思います。『お互いに守りあう(集団的自衛権)』というのがNATOの考え方です」

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 石破氏は繰り返し「日本政府は本当に国民を守るつもりがあるのか」という懸念を抱いていることを主張した。「あまり言いたくありませんが、市民が怒るべきだと思います」(石破氏)。政治を変えるには国民が「主権者」としての意識を持つことが重要なのではないだろうか。

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