2018年に創設された「レトロコンシューマー愛好会」の会員数は現在、1800人を超えた。ツイッターを中心に活動し、ファミコンやアーケードゲームなど70年代以降のさまざまなジャンルのゲーム好きが集まる場になった。苦労を乗り越え、さらなる発展を願う会長のプラウドローさんに話を聞いた。
2階建ての一軒家はレトロゲームに埋め尽くされていた。プラウドローさんは茨城県在住の48歳。親族が暮らしていた近所の空き家を舞台にした、日本屈指のコレクターでもある。2018年12月、久々に触ったツイッターで、ミクシィのコレクター仲間と出会い、新たな交流、情報収集の場をつくろうと、レトロコンシューマー友の会を立ち上げた。
ツイッターに登場する「レトロコンシューマー愛好会」のハッシュタグをつけたツイートの数々。コレクション部屋、貴重な逸品、コスプレ姿、ゲーム画像とその思い出、イラスト、記念日の紹介など、各自が思い思いの投稿を展開。プラウドローさんは「ゲーム好きなら誰でもOKです。全員が主役で楽しみ方は自由。当会は非営利団体です。皆が盛り上がってくれればそれだけで嬉しい」と語った。
コンシューマーゲームとは家庭用ゲームのこと。「当初はファミリーコンピューター以前が、対象のゲーム機であるという考えでした」と話すが、ある問い合わせでメガドライブの入会資格を尋ねられ「対象に入りません、と答えたところ、では入会しません、と言われました。その時にレトロゲームの捉え方は人それぞれだと気付きました。例えば中学生にとっては、生まれる以前に出たプレイステーション1は、間違いなくレトロゲームでしょうから」と機種の制限を撤廃。2019年2月に100人を突破して以降、順調に会員数を伸ばした。
会費は無料。個人情報は不要。ツイッターのアカウント保有のみが入会資格だが、迷惑行為対策のため仮入会を経ての昇格となる。公式アカウントへのDMで申し込む。中学生から会社の定年を迎えた者まで会員の年齢層は幅広く、女性も多い。フランス、韓国、中国、タイ、ドイツからの海外会員も在籍する。
会員証、アイコンのイラストはゲーム漫画の名作「ファミコンロッキー」で知られる漫画家あさいもとゆき氏が担当。会歌はレトロゲーム好きで知られ、ヒップホップグループKICK THE CAN CREWのメンバーMCU氏から提供を受けた。「あさい先生はご近所ということもあり画像提供や運営等の相談に乗ってもらい、現在も支えてもらっています。MCUさんは本当にカッコイイ曲を作って頂きました」と感謝を口にした。
会員数が100人を超えた頃から、気苦労が絶えなかった。ゲームは集めるものではなく遊ぶもの、といった〝そもそも論〟での批判、著作権侵害を問う声、金儲けを疑う声、会員同士のツイッター上での言い争い、覚えのない指摘などに身をさらされた。開設1年が過ぎた頃に運営委員会を立ち上げた。委員は15~20人で1年ごとに更新される。「すべてボランティアですが、おかげさまで平和になってきました」。違法改造ゲームの画像、オークションを仕掛けるものなど規約違反投稿への削除要請、DMでの問い合わせ対応など、役割を分担した上で、細かな対処に努めた成果が表れた。
会員証に記された信念は3つ。「全世界のレトロゲーム好きの為の愛好会です」「会員同士お互いを認め合い、仲良くしましょう」「ゲーム愛と情熱を持って、レトロゲーム界を盛り上げていこう」。コレクター、ゲーマー、コスプレイヤー、動画配信者、絵描き師を等しく認め合う環境を目指している。
会長には危機感がある。「ネットオークションに貴重なレトロゲームが出品されると、大半は海外勢に落札されてしまう。日本で生まれたゲームが海外に流出していることに危機感を抱いていて、国内を少しでも盛り上げたい思いがあります」。そう話す一方で、楽しさを求める遊び心も失ってはいない。昨年末にはツイッター上で印象的な投稿を紹介、投票する「KING OF RETROCONSUMER」を開催。入賞者にはゴールド会員証が贈られた。愛好会内でそれぞれの得意ジャンルを掘り下げる〝部活動〟も盛んで、独自に動画配信やインスタグラムへの投稿を行う会員をリツイート等で積極的に応援する。
今後はコロナ禍以降自粛していたオフ会の再開を目指す。「子どもの頃、家で友人たちと集まってゲームを楽しんだような環境を、日本各地に作れたらうれしいですね」と目を輝かせた。
※プラウドローさんのコレクションの数々はコチラ