公務員でも副業OKって知ってた?尼崎市役所には副業のお笑いで行政と市民を繋げる職員も

ぽすわんのカノー ぽすわんのカノー

「公務員は副業が出来ない」そう思っている人は多いのではないだろうか。筆者の家族や友人も全員が同様に思っていたが、兵庫県尼崎市には市職員でも申請すれば副業ができる制度があるのだという。どのような制度なのか、市職員3名で立ち上げたという『一般社団法人オリコム』の理事、白崎友朗さんに話を聞いた。

「元々、副業は禁止されているわけではありません。任命者の許可があれば出来ます。市の場合は市長ですね。尼崎市の制度は、本来直接市長に許可を貰う必要があったものを制度化したものです。所定のフォーマットにて申請できるようになりました」(白崎)

尼崎市では『パラレルキャリア応援制度』として、2021年1月からこの制度を開始した。去年末の時点で12人が活用しているという。誰でも適用されるものなのだろうか。

「この制度によって、NPOや公益法人の役員、地域のスポーツ少年団の指導者、その他地域社会への貢献活動で報酬をもらうことができます。“公益であるか”が大事なのでどんな副業でもOKという訳ではありません。あと、当然ですが、副業ですので本業の時間外と休日にしか行えません」(白崎)

市役所職員である白崎さんは、イラストレータである奥さんと共に商店街活性化の一端としてシャッターアートなどを描く活動を行っていたそう。その中で商店街関係者と交流が生まれ、街を活気づけるために市職員だからこそできる事があるのではないかと思い、空きテナントを借りて拠点を作りはじめた。

「市職員だと不動産を借りたり運営をすることは難しいので諦めようとしていました。ですがその時、この制度を見つけて『これなら出来る!』と思いました」(白崎)

さっそく担当の課と話し合い、一般社団法人を立ち上げることとなった。現在は静岡で始まった『みんとしょ』という民間で運営する図書館を商店街内に設置すべく奮闘しているという。

「図書館は来年1月くらいにオープンする予定です。今後、商店街で農業もしてみたいと思っています。ゴミを肥料にして……ってまだまだ構想段階ですけどね」(白崎)

尼崎ならではと言える副業をする人もいる。元お笑い芸人で2006年に尼崎市役所に入庁した江上昇さんだ。

「制度ができる前から市に許可をもらってさまざまな活動をしていました。終業後に若手職員皆で勉強をする“夜カツ”、お笑い芸人の経験を元に“お笑い行政講座”など、様々な活動をしていました。ただあの頃は謝礼が発生すると、市役所内でスタンプラリーが発生するほど手続きが複雑でした。制度ができてからはそれがかなりスムーズになりました」(江上)

先述の通り、世間では公務員は副業NGというイメージが非常に強い。その理由を江上さんが教えてくれた。

「かつて行政職員は、汚職や地域の業者との癒着を防ぐために、名刺も支給されず、持たないのが当たり前でした。また決められたことだけを確実にこなすという風土があるため、“融通の効かないお役所仕事”と揶揄されることもあります。ただ、近年は行政職員が積極的にまちづくりに関与することを政府が推奨しています。それに伴って尼崎以外にも様々な地域で副業が制度化されています」(江上)

国が市役所職員の兼業に関する新基準を発表したのが2019年。それよりはるか以前から副業をしてきた江上さんにとって、現在の公務員の副業事情はどう見えているのだろうか。

「入庁して15年ほどになりますが、元芸人ということも相まって地域活動に積極的にとりくむ私は正直浮いていました。制度が出来ることで、若い世代からも柔軟な考え方が出てくるようになりましたが、現時点で副業をしている職員は正直浮いていると思います(笑)。時代に即した新しい流れだとは思うので、それぞれの得意な形で盛り上げていけたらと思っています」

「お役所仕事」と呼ばれたような融通の利かない働き方がもう古いという認識は世間に浸透している。少子高齢化など問題が山積する現代、これからは官民が一体となった、尼崎市のように柔軟なまちづくりへの取り組みが主流になってゆくのではないだろうか。

一般社団法人オリコム:https://oricom.hp.peraichi.com/

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