作家の乙武洋匡氏(46)が19日、都内で街頭演説を行い、自身が立ち上げた政治塾「未来をつくる政治塾」への参加を呼びかけた。7月の参院選では、東京選挙区から無所属で出馬しながらも落選。選挙活動で2度訪れた錦糸町駅前で、約4カ月ぶりの街頭演説に臨み「政治のことを勉強して、政治を我々の手に取り戻しませんか。社会に選択肢をつくるこのプロジェクト、アクションに参加してほしい」と訴えた。
酒に酔った通行人がからみ、ヤジも飛ぶ繁華街を「目線の高さが同じで、生の声が聞ける。どんな声に対しても受け止められる場所」とし、街頭演説の場所としてあえて選んだ。約1時間、政治塾立ち上げへの思いを力説。「どこかの政治家、政党がやるものではない。政治家を輩出するというものではなく、コミュニティーや仲間づくりを軸にしている。ここから勉強していくことが大切。みなさんと学んでいきたい」と理念を語った。
約33万票を集めた参院選を「私たちはあきらめない」「選択肢を増やそう」のキャッチフレーズで戦った乙武氏。「ダイバーシティ(多様性)は当選圏に届くほど、大きな問題ではないという現実をしっかり受け止める。それでも、参院選が終わってもキャッチフレーズは変わることはない。選択肢がある社会にしていくという思いはあきらめない」とし、新たな道へ進む。
「未来をつくる政治塾」の講師には、米イエール大助教授で経済学者の成田悠輔氏や、熊谷俊人千葉県知事、選挙プランナー・松田馨氏、元テレビ朝日アナウンサーの龍円愛梨都議、元仮面女子の橋本侑樹渋谷区議が就任。全6回の講義で入学金5万円、受講料15万円で、定員は30人程度。現役官僚や地方議員からの応募もあるという。
乙武氏は「政治家になったことがない人が政治塾を開くのですか…という意地悪な声も届いているが、政治家じゃない人が、学ぶ場所をつくってはいけないのですか?民主主義にとって、こんな危ない考えはない」と熱弁した。松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏が興した政治塾・松下政経塾の例を挙げ「政治を学ぶ場をつくることに、政治経験や立場は関係ない」と語気を強めた。
演説後に開かれた質疑応答では「若者にとって5万、15万は敷居が高すぎるのでは」との声も出た。乙武氏は「悩ましいところ。運営費や人件費を全部考えてもこの金額になってしまう。ギリギリのライン。心苦しい」と理解を求めた。〝U30割〟として、30歳未満の入塾料を無料、受講料を10万円にするとし「被選挙権がない若い世代も、当事者として考えて欲しい。政治塾を、ぜひ広めていただきたい」と声を枯らしていた。