ロシア新兵器「ポセイドン」はプロパガンダ止まり?「小型核爆弾の使用に可能性」グレンコ氏が指摘

深月 ユリア 深月 ユリア
ロシアがウクライナに侵攻(Negro Elkha/stock.adobe.com)
ロシアがウクライナに侵攻(Negro Elkha/stock.adobe.com)

 ロシアのプーチン大統領が侵攻するウクライナへの核兵器使用も辞さない構えを見せ、国際社会が危機感を抱いている。ロシアが最新型の核兵器を開発中という報道を受け、ジャーナリストの深月ユリア氏が海外のニュースをまとめ、ウクライナ出身の国際政治学者に見解を聞いた。

   ◇    ◇    ◇

 ウクライナ戦争でプーチンが核兵器を使用する可能性が高まっている中、複数の海外メディアは「ロシアがアメリカ沿岸部の都市に放射能の津波を発生させるために開発中」という新兵器・原子核魚雷「ポセインドン」の動向に注視している。

 ロシアのタス通信によると、「ポセイドン」は原子力潜水艦に搭載され、海の中で標的沿岸に近づき、海中で核爆発を引き起こすという、プーチン大統領のトップシークレットプロジェクト〝最恐〟とみられる新兵器である。

 「ポセイドン」は最大で100メガトン級の核弾頭を積み、高さ500メートルの津波を発生させるという。あくまでロシア側のメディアの主張だが、これが事実だとすれば、水素爆弾「ツァーリボンバ」をも越える威力であり、標的となった地域は文字通り“ハルマゲドン”状態で、数十年間は居住不能になる。この最恐兵器「ポセイドン」の使用可能性が危惧されているのだ。

 今年4月、英国のジョンソン元首相がキーフでウクライナ支援についての首脳会談を行った際、ロシア国営テレビが「ポセイドンは最大100メガトンの核弾頭を搭載」「イギリスの海岸近くでこの魚雷が爆発すれば最大500メートルの高さの津波がイギリスをのみ込み放射能の砂漠と化すだろう」と〝威嚇〟した。

 今年7月、 米FOXニュースによると「ポセイドン」はロシア海軍に引き渡された。そして、10月2日のイタリア誌「ラ・レプブリカ」によると、「ポセイドン」を積んだ原子力潜水艦「ベルゴロス」が北極圏の基地を出港し姿を消した。FOXニュースによると、ロシアが「ポセイドン」の核実験を行う可能性があるという。6日、バイデン米大統領は「プーチン氏が核を使えば、アルマゲドン(世界最終戦争)は避けられない」と発言した。

 しかし、「ポセイドン」の開発が事実だとしても、ウクライナで「ポセイドン」を使用すれば、ウクライナのみならずEU諸国、そしてロシアも放射能に汚染されてしまう。プーチンはそのようなリスクを負うのだろうか。

 戦略情報専門家のレベカ・コフラー氏がFOXニュースで答えたインタビューによると「まだ実用化されていない兵器で可能になるのか2027年頃。ただし、NATOを“威嚇”するために実験する可能性はある」という。

 ウクライナの国際政治学者で「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」などの著者、アンドリー・グレンコ氏に筆者が取材したところ、同氏は「第二次世界大戦中にもドイツが負けている頃に『奇跡の新兵器』が使われるんじゃないか、というプロパガンダが流行(はや)りました。完成していない、実験もしていない…ならば、実用性がありませんので、ロシアのプロパガンダの可能性はあるかと思います。また、ウクライナが面する海は黒海のみですので、ウクライナだけに狙いを定めて攻撃できません。使用すれば隣国のルーマニアなどNATOが加盟している他国も被害を受けます。NATOと戦えばロシアは負けますので使わないと思います」と指摘した。

 一方で、グレンコ氏は「ただし、小型核爆弾はウクライナだけに狙いを定めて攻撃できるので使用される可能性があります。プーチンに小型核爆弾の使用を断念させるには、NATOが『使用した場合は報復する、プーチンの命を狙う』と強く主張することが必要です」との見解を示した。

 やはり、「ポセイドン」はロシアメディアが西側を“威嚇”するためのプロパガンダの可能性があるのだろうか。いずれにしても、ますます狂行・蛮行に出ているプーチンを止めるには、「目には目を、歯には歯を」で、NATOや米国もプーチンを(実際に武力を使用せずとも)〝威嚇〟する作戦が必要なのかもしれない。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース