ウクライナ東部ドンバス地域の一部を実効支配する親ロシア派による、ロシアへの編入に向けた住民投票が23日から始まった。27日まで実施されるという。この「投票」については、ウクライナをはじめ、欧米諸国から「偽物」などと非難されている。さらなる混迷が予想される今後のウクライナ情勢について、ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の国際政治学者アンドリー・グレンコ氏に話を聞いた。
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長引くウクライナ戦争。9月、東部ハルキウ州で3000平方キロ程度の領土を取り返し、ロシア軍を撤退させたウクライナ軍だが、ロシアのプーチン大統領は同21日、 「ロシア国民の部分的な動員を宣言する」という大統領令に署名し、ロシア兵の予備役のうち30万人の動員を表明。さらに 「欧米は核兵器で我々を脅迫している。ロシアの領土の領土と国民保護のため、あらゆる手段を使う」と核使用を警告した。
また、23-27日に親ロシア武装勢力が一方的に樹立を宣言した「ルガルンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」、ロシア軍が占領する南部ヘルソン州、ザポリージャ州の4州で、ロシア軍の監視の元、ロシア併合に向けた「住民投票」が行われ、投票後に併合が宣言されると予測される。それは名目上の〝不正投票〟という見方がされている。
ますます、混沌とするウクライナ情勢だが、今後の戦況はどうなるか。筆者はウクライナの国際政治学者で「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」などの著者、アンドリー・グレンコ氏にインタビューした。
-今回の部分的動員はどのように影響しますか?
「人だけ部分的動員しても、訓練と武器装備が必要になりますので、すぐに使える訳ではありません。今回の部分的動員が戦況に影響するのは2-3か月後ですので、それまでにウクライナ軍がどれだけ成果を収められるかですね。そして、私が懸念するのは、『部分的動員』といっても、独裁国家なので、実際は『総動員』 かもしれないことです。今までウクライナで18万人の占領軍がいるので、30万人動員という事は侵略軍を倍以上にするつもりだという事です。2倍で終わるなら、ウクライナ軍は対応できますが、もし、その後は総動員を行い、3、4倍にするなら、今の装備ではしんどくて、戦争は来年中に終わらないかもしれません」
-ロシア国内でも反プーチンデモがあるのに「総動員」されますか?
「国内には治安部隊(ロシア連邦国家親衛隊、OMON、SOBR、ロシア国家親衛隊警備部。ロシア軍部の情報によれば国内の84か所、約34万人もいるという)がいて、その数はデモ隊より多いと思われます。残念ながら国内のデモは戦況への影響は低いでしょうね。ただし、ロシア兵の士気が下がっていて、故意に腕や足をケガして、なんとか動員されないように抵抗するロシア兵は増えるかもしれません」
-戦地で誰かを殺して自分も殺されるよりましですもんね。
「ロシア兵が足りず、現在、刑務所の受刑者も動員されます。囚人もロシアの民間軍事会社「ワグネル」(事実上、プーチンの傭兵部隊)の社長、プリゴージンは、ロシアの各地の刑務所を回って、受刑者を戦争に行くように勧誘しています。半年間、戦争に参加したら、刑はなしになって、家に戻れると。月給10万ルーブル(約24万円)で、死んだら遺族に500万ルーブル(約1200万円)だという条件です」
-4州で行われる住民投票の目的は何ですか?
「住民投票」(とその後に想定される領有宣言)はカメラの前に投票箱を置いてサクラが投票する映像を撮るだけで、実際は『住民投票』は行われないかと思います。『住民投票』の第一目的はプロパガンダを作ることでしょう。つまりと西側に『4州はロシア領だからいかなる手段を使ってでも支配する』『ウクライナに占領されたから解放しなければならない』という、国家総動員のためのプロパンガダですね」
-今回の戦争で核兵器は使用されますか?
「可能性はあるでしょう。プーチンは『ロシア領土統一に脅威があれば核を使う』と言ってます」
-戦争をなるべく早く終わらせる道はありませんか?
「この戦争は民主主義国家と独裁国家との戦いですので、ウクライナが勝つしかありません。ウクライナは軍事同盟に加盟していませんので、今後も西側が軍隊を派遣するのは難しいでしょう。引き続き、ウクライナにさらなる武器の支援が必要です」
ロシア国内でも日に日に反発が増し、「唯一の強力な味方」の中国の習近平からも早期停戦を勧められ、もはやプーチン以外の誰もが停戦を望んでいる。プーチンの狂気はいつまで続くのか。