世界的大ヒットとなった、Netflix(ネットフリックス)オリジナルシリーズ『イカゲーム(2021)』が、9月12日(現地時間)に『第74回 Primetime Emmy Awards(以下、エミー賞)』で、監督賞を含む6冠に輝いた。
非英語圏では初の受賞となる歴史的快挙で、授賞式を終え9月15日に帰国したファン・ドンヒョク監督と、出演者のパク・ヘス、チョン・ホヨンの前には、大勢の取材陣とファンが押し寄せるなど、現在韓国では大きな話題に。
ファン・ドンヒョク監督は、空港に集まった記者の前で、母親と応援してくれたファンに感謝を伝えると、制作が決定している『イカゲーム シーズン2』に触れ、「シーズン2がシーズン1のようにたくさん愛されればと思います。僕にもう1度機会をくださるなら、賞レースに参加しゴールデングローブ賞や、米SAG(米国俳優組合賞)、エミー賞のステージにまた立ってみたいです」と、今後の抱負を語った。
すると世間の関心は自然と、ファン・ドンヒョク監督のフィルモグラフィーへ。中でも、映画『トガニ 幼き瞳の告発(2011/以下、トガニ)』が再注目されている。
それは、『イカゲーム』に特別出演し、登場シーンは短かったものの好演が評価されたコン・ユが主演を務めているから。
ちなみにコン・ユは、『トガニ』で縁を結んだファン・ドンヒョク監督との義理を返すため、『イカゲーム』のオファーを受けたのだとか。
そんな2人が初顔合わせとなった本作は、韓国のある聴覚障害者学校で、教師から常習的 に性的虐待をされていた、子どもたちの残虐で悲しい実話を基に作られた衝撃作。
幼い子どもでありかつ障害者への性暴行という、卑劣極まりない犯罪を、施設や地域ぐるみで隠していたという、韓国を震撼させた出来事が取り上げられている。
そして『トガニ』をきっかけに、世間からは処罰を求める声が高まった。結果、事件が再検証され、当該学校は法人格を失い廃校になったそうだ。
また、私立学校法が見直されるなど、本国の隠れた社会問題を浮き彫りにし、それを見事にエンターテインメントへと昇華させ、観客動員数466万人を記録するビッグヒット作に。
『トガニ』公開以降、社会の不正や問題点に焦点を当てた作品が増え、韓国映画界にも大きな影響を与えた作品となったのだ。
そんな本作で、コン・ユは不条理に立ち向かい、傷ついた子どもたちを慰め、守るために世間へ真実を明かすことに奮闘する美術教師カン・イノ役を熱演。
大衆から「演技力に重みが加わった」と評価され、2011年『第32回 青龍映画賞』では人気スター賞を手にしている。
深刻で難しい題材を扱いながらも、『トガニ』は国民の感情を動かす力を持った作品だ。
日本では現在、動画配信サービスdTV、Hulu、U-NEXTから視聴が可能。一度ご覧になってみてはいかがだろうか。
(構成:西谷瀬里)