理化学研究所(理研)などの研究チームが「ゴキブリのサイボーグ化」に成功したというニュースが報じられた。例えば、災害時などで人間が立ち入りできない危険な場所での救助活動や調査などを託すことも可能になるという未来図も描けるかもしれない。ジャーナリストの深月ユリア氏が報道された内容を紹介し、理研の元研究員にも話を聞いた。
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科学雑誌「npjフレキシブル・エレクトロニクス」オンライン版(9月5日付)によると、理研の開拓研究本部室、早稲田大学とシンガポール南洋理工大学との国際共同研究グループが、マダガスカルゴキブリに太陽光で再充電可能な電子部品を搭載した「ゴキブリサイボーグ」を開発したという。
通常、大きな装置を昆虫などの小さな生物に装着すると動きが鈍くなってしまうので、研究チームは、世界最薄の4マイクロメートルの太陽電池をマダガスカルゴキブリの腹部背側に貼り付け、 お尻の尾葉に電気刺激を送ることで、マダガスカルゴキブリの動きを遠隔操作することに成功したという。 この仕組みを使えば、マダガスカルゴキブリが生きている限り、再充電可能で、電池切れを起こすこともないという。さらに、この研究はゴキブリに限らず、幅広い昆虫をサイボーグ化する道が開けるという。
サイボーグ昆虫は 災害の際の人命救助に役立つことが期待されている。人間が入れないような狭い空間・危険な空間に送り込むことが出来るので、例えば、サイボーグ昆虫に小型カメラや温度センサーを装着して、地震・津波・台風などの災害発生時に瓦礫(がれき)の下に人が埋もれていないか探査することができるだろう。
しかし、インターネット上では「ゴキブリになぞ救助されたくない!」という皮肉や、「動物虐待ではないか」という批判、「軍事利用されるのでは?」「サイボーグゴキブリはスパイにもなりえるのでは?」という懸念もささやかれている。
筆者が理研の元研究員・小早川智氏に「本研究が悪用されるリスクがないか?」と質問したところ、「あらゆる科学技術は使う人の意思次第だと思います。諸刃の剣ですね」と指摘しつつも、同氏はかねてより、理化学研究所の研究に限らず、政府が大学の研究を軍事利用することに懸念を示していた。小早川氏は「安倍政権が2012年に復活してから、基礎的な研究よりも軍事転用されかねない大学研究に国が大規模な予算を出すようになっていました」と指摘する。
また、元探偵で政界の裏情報などにも詳しいというジャーナリストの男性(氏名非公開)を取材したところ、「昆虫のサイボーグは、かねてより米国防総省・米国防高等研究計画庁の指示により複数の研究機関で研究されていました。昆虫サイボークにマイクロコンピュータを埋め込めば、敵地の偵察や攻撃などに活用できますし、超小型爆弾を搭載して特定の人物を暗殺させることも不可能ではないでしょう。また、昆虫サイボーグは探偵の代わりにもなりえます。昆虫サイボーグに浮気調査、人探し、身辺調査をさせれば興信所は情報収集できるでしょう」との見解を示した。
昆虫の中でも、生命力が異常に強いゴキブリは軍事兵器・スパイ利用にはうってつけだろうという考え方もある。ゴキブリの放射能耐性は人間の数百倍で、エサがなくても人間のフケひとかけらで1か月間生きられるという。
実際に、複数の海外メディアの報道によると、2013年に米ミシガン州の「バックヤード・ブレインズ」社は「ロボローチ」というゴキブリサイボーグを商品として販売していた。ただし、環境耐性を持つゴキブリは、数分後には装置からの指令を無視する術を身に付けてしまい、数日後には、全く言うことを聞かなかったらしい。販売サイトには、「こうなってしまったゴキブリからは、装置を取り外し、リタイアさせてください」と記載されていた。
生命倫理の問題も指摘されているが、生物を思い通りに動かそうとサイボーグ化するより、超小型サイボーグを作った方がよいようにも思える。小早川氏の主張するように「あらゆる科学技術は諸刃の剣」だが、政府が関わる研究には税金も投入されており、悪用されないよう注視すべきだろう。