ランドセルが重くてつらいが、その中身である教科書を教室に置いて登下校する「置き勉」が禁止されていて、どうしたらいいの?そんな小学生の悩みを解決するアイデアが当事者である子どもたちから発案され、製品化された。その背景には、「置き勉」禁止の理由をクリアすることで、教科書を教室に置くことを可能性するという発想がある。子どもたちの思いを関係者から聞いた。
今回、開発された新商品「さんぽロック」(税込1980円)。学校机を利用した自分専用の鍵付きロッカーだ。ランドセルをキャリー化して体感重量を9割減とするスティック「さんぽセル」(今年4月発売)に続き、栃木県の小中学生らが夏休みの研究として7月末に発案し、約20日間で製品化。プロデュースした会社「悟空のきもちTHE LABO」では既に予約受付中で、9月20日から発売予定。「さんぽロック」という名称は「教科書を固く守り、通学をさんぽ(散歩)にしたい」という意味が込められているという。
今回の経緯について、スタッフとして子どもたちに協力した大学3年の岡村連太郎さんは、よろず~ニュースの取材に対して「さんぽセルが話題になった時に『ランドセルをキャリーにするのは根本的な解決策じゃない!』って、ネットニュースなどのコメントで多く書かれていて、『じゃあ、根本的な解決策を作ろう』となりました。根本的な解決策は、通学の荷物を減らすことなのですが、さらに、その根本の問題は先生や学校が置き勉を禁止にしていること。『その理由をぜんぶクリアにしたらいいんじゃない?』となり、禁止の理由を調べながら1つずつ考えました」と振り返る。
「置き勉禁止」の主な理由は、(1)教室に置いた教科書に「いたずら」されるなどしたてイジメの温床になる、(2)紛失・盗難のリスクがある、(3)朝の準備ができない人に育つ…の3点だという。
(1) と(2)の解決策は学校机の引き出しに個人専用の「鍵付きロッカー」を装着すること。備品である学校机を傷つけないよう、磁石シートが引き出し部分下側の金属面に付く仕様にし、いたずらや盗難防止のため、南京錠のロックに加え、ハサミなどでこじ開けられないように、前面の隙間を埋める構造にした。
(3)については、「社会教科書」「漢字ドリル」「算数ノート」「地図帳」など、教科書や副教材を記入した「準備カード」を『今日、必要な物』としてランドセルや通学バックに付けることで対応。教科書類は学校に置いていても、その日の授業に備えた意識付けをしている証明となり、念のため、子どもの偽造を防ぐために保護者が捺印する。
岡村さんは「置き勉禁止がルールだから…とあきらめず、自分たちで主体的に解決するように取り組んで解決策を出していく姿にすごく頼もしいと感じました」と手応えを示す。さらに「さんぽセルが話題になったおかげで、学校が置き勉を認めてくれたという感謝のメールがいくつもあり、ランドセルが重い問題を多くの人が考えてくれて、変化が始まったことがうれしかったです。その中で『置き勉』が認められない人も多く、みんな『今度は、置き勉が許可される商品を作って、日本中の荷物を軽くするんだ!』と意気込んでいました」と子どもたちの思いを代弁した。
今後に向け、岡村さんは「さんぽセル同様、さんぽロックの願いも日本中のみんなの荷物が軽くなることなんだと思います。発表後まだ数日ですが、初回生産分は完売し、1か月待ちになる反響をいただいています。開発中、子どものプライバシー問題についての興味も多く、『学校の机に鍵は必要なんじゃない?』という疑問が生まれ、『この構造のまま、将来、そちらに特化した商品に変えていってもいいね』って話しています」と新たな展開も示唆した。
まもなく、2学期の秋。実際に教室で活用されることによって、ランドセルの重さ軽減だけでなく、子どもたちの意識がどう変わっていくか注目される。