北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は11日、新型コロナウイルスとの戦いに「勝利した」と宣言した。さらに妹である金与正党副部長は、正恩氏が高熱に見舞われ、苦しんでいたことを明かし、北朝鮮がコロナ感染源と主張する韓国への強力な報復を警告した。
与正氏は正恩氏自身も発熱したと述べ、コロナに感染していた可能性を初めて示唆。「(正恩氏は)高熱で重い症状だったが、人民のことを思い片時も横になることができなかった」と述べた。詳細は明らかにしなかったが、韓国から飛ばされたビラが感染拡大の原因だと主張した。韓国の脱北者団体などは北朝鮮の体制を批判するビラや食料、医薬品などを付けた風船を北朝鮮に飛ばしている。
与正氏は韓国の尹政権がこうしたビラ散布を禁止する2020年の措置撤回を検討していると批判。「韓国からの絶え間ないごみの流入をもはや看過できない」とし、韓国当局を「一掃する」とけん制した。また「致命的な報復措置」で対抗する必要があるとした。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)によると、正恩氏は5月に導入した最大限の感染拡大抑制措置の解除を命じた。同時に「世界的な健康危機が終わるまでは鉄のような防疫壁を維持し、防疫対策を強化しなければならない」とも述べた。
北朝鮮は5月中旬に、それまでの国内での感染者ゼロから一転して感染拡大を認めた。同国では、新型コロナに対するワクチン接種はほぼ行われていない。国営テレビで予防対策や対症療法を説明し、「塩水でうがい」することや複数の薬を飲むように勧めたが、国内で医薬品が十分に供給されていないことに危惧する声があがっていた。