今年は、久しぶりに全国各地で夏祭りが開催されている。青森県弘前市でも8月1日から3年ぶりに「弘前ねぷたまつり」が開催。コロナ前は、例年160万人あまりが訪れていた人気の夏祭りだ。
大きなねぷたや小さいものも入れて約80台のねぷたが、城下町・弘前を練り歩く。今回の目玉は、ねぷた史上初めて、弘前市にかつて実在した地元忍者が主人公として描かれた扇ねぷた。このねぷたは、高さ約7mに及び、茂森津軽ネプタ愛好会が制作したもの。
祭り前に少しだけ特別公開します。扇型のねぷた中央には、戦国大名・津軽為信に仕えた忍者・服部康成が描かれている。先日(7/21)発売された人気ゲーム「信長の野望・新生」(コーエーテクモゲームス)にも服部康成は登場している。忍者というと普通は黒装束姿を想像しがちだが、この忍者は勇壮な甲冑姿をしている。
服部康成とはいかなる人物なのか。青森大学教授で、日本御忍印委員会顧問の清川繁人教授に尋ねると「服部長門守康成は津軽為信に仕え、関ヶ原の戦い前哨戦では忍びとして東軍の勝利に貢献して家康から一字を賜りました。弘前藩では家老として青森港開港やねぷた祭りの始まりにも関わっているとされる人物です」と解説してもらった。
どうやら忍者でありながら西軍の武士になりすまし、甲冑姿になったようだ。今回のねぷた絵はねぷた絵師の山谷寿華さんが描いており、題名は「大垣城の戦い 服部長門守康成、忍術を以て撹乱す」。その豪快な筆遣いが、夏祭りで爽快に輝いてくれそうな絵である。
見て楽しむだけでなく、服部康成の「御忍印」(おしのびいん)が、弘前ねぷたまつりに合わせて8月1日から発売される。「御忍印」は、御城印の忍者版で、史実忍者の記念印。かつて忍者が活躍した地で、忍者で地域おこしをする市町村で出されており、その地へ行かないと手に入らない代物。「御忍印 服部康成」の絵も、ねぷた絵師・山谷寿華さんの作品で、弘前城と修験者姿の服部康成が豪快なタッチで描かれている。
武者姿から今度は山伏のような姿の理由を清川教授へ尋ねると、「康成は弘前藩家老まで出世しましたが、元々修験者でもあったんです」と、変装術の七方出を思わせるような御回答を頂いた。
まさに忍者!今まで御忍印は、佐賀県嬉野市で田原安右衛門、弁慶夢想、古賀源太夫、吉田千左衛門が2022嬉野忍者フェスタで頒布され、群馬県東吾妻町では真田昌幸家臣で忍者の横谷左近が「道の駅あがつま峡」で現在発売中だ。忍者がフィクションではなく実際に存在したことや各人の経歴には大変驚かされる。ご興味を持たれた方は、日本御忍印協会の公式サイトを覗いてもらいたい。
「御忍印 服部康成」は、8月1日から弘前城天守内売店や弘前観光コンベンション協会の弘前市まちなか情報センター、弘前忍者屋敷など市内5施設で発売される。地元忍者を通して、その土地の歴史を知り、この夏の旅先に決めるのもイイかもしれない。