日本財団ボランティアセンターが、ウクライナ避難民支援のため派遣する日本人学生ボランティアの出発式が30日、都内で開かれた。同センターは学生105人を15人ずつ7グループに分けて、ウクライナの隣国・ポーランドの都市クラクフや国境近くに派遣する予定。避難民受け入れ施設での活動や、障がい者の避難民を支援する。
日本財団の笹川陽平会長によると、ロシア軍の侵攻でウクライナから避難した人々の支援のため、学生を組織的に派遣するのは世界初の試みだとした。笹川会長は「日本の大学生は内向き志向だと言われるが、実情は違う。志が強い大学生がいるのは心強い。まずは何よりも安全を第一に考えなければならないが、現場でご活躍を願いたい」とエールを送り、活動ユニホームを渡した。
早大2年の齋藤凜花さんは、生まれつきの感音性難聴で両耳が聞こえない。人工内耳の手術を受け、会話ができるようになったという。「障がいを持っている人がどれだけ不安で、自分の感情を押し殺して生活しているか想像するだけでも苦しい。私は障がいを持っているからこそ、現地で気づくことがある。心細さや不便さを、少しでも減らすことができたら」と志望動機を語った。
齋藤さんは「紛争地に近い場所に派遣される学生は、最初から全員が全員、家族から賛成されたわけではありません」と話し、家族の反対を押し切ったメンバーがいることを明かした。東大4年の河村若奈さんは、両親から「いま、何でわざわざ紛争地に行く必要があるのか」「ウクライナと日本の関係性は低い。何かあったらどうする」と猛反対された。
河村さんは、東大で国際政治学を専攻。学んできたことが現実問題となり〝知見を知見で終わらせない〟との思いがあった。「第2次世界大戦以来の大きな出来事で、普通の国だったウクライナが戦禍にあることに衝撃を受けた」とボランティアに応募。書類選考や面接をクリアしたが、両親の壁が立ちはだかった。
三重県の実家に毎日のように連絡し「今だからこそ行く意味がある。来年就職するので、行くなら今しかない。必ず無事に戻ってくる」と懇願。両親をついに根負けさせたという。「母親からは最近『あなたの思いがわからなくて、反対したわけではない』という手紙が来ました…」と苦笑する河村さん。派遣学生の第1グループは、31日に出発。6月16日まで、現地でボランティア活動に従事する予定だ。