ウクライナに侵攻するロシア軍兵士の一部には、位置情報を使ってマッチングされた男女がチャットでコミュニケーションできる出会い系アプリの「ティンダー(Tinder)」に興じる者がおり、そこから西側の機関に情報が漏洩していたという報道があった。女優でジャーナリストの深月ユリア氏は、こうした現象について、ウクライナ出身の国際政治学者アンドリー・グレンコ氏を取材し、同氏はロシア兵の心理的な背景を分析した。
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ロシアがウクライナに侵攻してからもうすぐ2カ月が経つ。クレムリンに反対意見や助言をくれる側近がいない独裁者・プーチン大統領は当初、「4日間でキーフを制圧できる」と思い込んでいたようだったが、計画が崩れ、ロシア軍は食料や物資不足に苦しんでいる。 さらに、英エコノミスト誌(3月28日付)によると、最新鋭の軍用無線「アザート」がロシア軍の一部にしか行き渡っておらず、ロシア兵士たちは民間用の古い無線機を使っている可能性があり、作戦が〝ダダ漏れ〟だそうだ。
このような戦況で、ロシア兵たちもますます士気が低下しているようだ。
英紙「デイリーメール」の報道によると、なんと、ロシア兵たちはマッチングアプリ「Tinder」にはまっているそうだ。そして、英国の諜報(ちょうほう)機関がTinderを通じて、ロシア兵から情報収集をしているという。
今回の戦争はソーシャルメディアによるロシア・ウクライナ両国の情報戦でもあるが、ロシアでは、Facebook、Twitter、TikTok、Instagramの使用は禁止されている。しかし、Tinderの使用は制限されていない。Tinderは誰でも簡単に登録できるし、性別や身分を偽って登録することも可能だ。
ウクライナの国際政治学者アンドリー・グレンコ氏は「元々、外国を侵攻する軍隊が自国を守る軍隊より士気が低いのは一般的なことです。征服する側の軍隊は守りの軍隊より3-4倍の軍がないと勝てません。さらに、今回は戦うための目的意識がないロシア兵が多いと思います。なぜウクライナに派兵されたか分からない兵士も多いようです。それに加え、長引く戦争により物資や食料不足になっているので、中には一刻も早く戦地から抜け出したい、遊びに行きたい兵士もいるのはないでしょうか」と指摘した。
長引く戦争に一部のロシア兵はTinderにはまるほど、やる気がなくなっているのだろうか。これでは、西側のスパイがTinderに登録して「ハニートラップ作戦」でも仕掛けたら、容易にロシア軍の動きもつかめるだろう。このようなロシア兵たちが、命がけで故郷と家族を守ろうと戦うウクライナ兵に勝てないのは納得だ。
士気が低下しているのはウクライナに有利なのは言うまでもなく、プーチン大統領が諦めることを期待したいところだが、プーチン大統領は今月9日、ウクライナでの軍事作戦を統括する総司令官を設置することにした。総司令官はシリアの軍事作戦を指揮し、ロシア国内で「英雄」視されているアレクサンドル・ドボルニコフ上級大将。現在、ロシア軍のドンパス地域とキーフでのミサイル攻撃は激化していて、今後も刻一刻戦況が変わる可能性がある。
「プーチンのプーチンによるプーチンのための戦争」はいつまで続くのだろうか。