イヌとネコは、太古の昔から令和の今でもペットとして不動の人気を誇る。飼い主に忠実なイヌに対して、気まぐれなネコ。そんな性格に思われているが、本当だろうか。TBS「世界ふしぎ発見!」でミステリーハンターとして活躍し、生き物に関する著述も多い動物作家の篠原かをりが、イヌとネコの個性について考察する。
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イヌとネコは長い歴史をヒトと共に歩んできた動物だ。
以前、私が訪れた古代エジプトの遺跡ではネコの像もイヌの絵も目にした。
遥か昔の人々もその魅力に心を奪われていたのだろう。
日本を始めとして飼育頭数ではイヌを上回る国も多いネコだが、イヌの研究よりもネコの研究の方が少ないと言われている。これはネコの気まぐれな性質によってイヌより研究が難しいことが一因だ。しかしながら、これだけ長い時の中で人の心をつかんで離さないネコやイヌは研究者たちの関心も離さない。
昨年発表されて話題を呼んだのは、飼い主に親切な人と不親切な人、そしてそのどちらでもない人に対してイヌやネコがどのように対応するかを検証した研究である。
飼い主がふたをあけようとする時に手伝った人と意図的に無視をした人のどちらからおやつをもらうかを調べるという内容である。
イヌは飼い主に不親切だった人からおやつをもらうことを避ける傾向があることは過去に行われた実験ですでに確かめられていたが、ネコはどの人物からも同じようにおやつをもらうという結果になった。
しかし、イヌに比べてネコが薄情と断言するのは早計だ。元来、群れで暮らす生き物であるイヌは助け合うことの価値を重視しているのに対し、ネコには助け合うという仕組みがなじみ深くなかったのかもしれない。
また、『猫なんかよんでもこない。』という映画化もされた漫画があったが、「飼い主の声を他の人の声と区別している」ことが分かっているし、「にゃーという鳴き声は本来子猫だけのものであったが、ヒトとコミュニケーションを取るために発達したこと」や「自分の名前を理解していること」も研究によって示唆されている。
今回紹介した研究はイヌとネコを取り巻く研究のほんの一部にすぎない。
そして、イヌとネコの違いどころか、「イヌ好きの人」と「ネコ好きの人」に着目した研究も数多く存在する。
4年前に愛犬を亡くした筆者は「犬と猫の飼育経験者では,亡くしたペットに対して「もう一度会えるなら,してあげたいこと」の内容が異なる」という論文タイトルを読んだだけで何かがこみ上げてきた。「思い切り抱きしめたい」「大好きだよと伝えたい」「たくさん遊んであげたい」、してあげたいことは数限りなく浮かぶが、よく考えるとどれもさせてもらっていることのような気もする。
イヌとネコ、そのどちらも私たちにとってかけがえのない存在である。