第94回選抜高校野球大会が18日に開幕し、甲子園球場で熱戦が繰り広げられる。「春のセンバツ」は球春到来を実感できる一大イベント。さらに「母校」が出場となると、自分が出場しているわけでもないのに力が入るというものだ。ところが、調子に乗って、上司の地元校を軽く見た発言をしてしまったら…?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、失態の挽回策をお伝えする。
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【今回のピンチ】
「センバツに母校が出場。『初戦は〇〇県の学校か。もらったな』と言ったら、部長が『俺の地元だ』と……」
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春と夏の甲子園大会が始まると、日本中の「郷土愛指数」が一気に高まります。
そんな中で、母校が出場する喜びに浮かれて、不用心にほかの県に失礼なセリフを吐いてしまいました。しかも、弱い県扱いしたのは部長の地元。悪気はなかったとはいえ、とんでもない失態です。
ただ、部長だって責めているわけではなく、ちょっとからかうつもりで「俺の地元だ」といったはず。ここで「す、すみません」としょんぼり引き下がったら、「おいおい、俺がそんな心の狭い人間に見えるか」と、余計にムッとさせてしまうでしょう。
ここは浮かれた調子を保ちつつ、まずは「おや、部長の地元ですか。となると、きっと手ごわいですね!」と、危険なコースに飛んできた球をカットして、体勢を整えます。
さらに、たとえば部長が知性派タイプなら、
「部長みたいに頭脳プレーが得意かもしれませんね。油断しないように、宿舎に電話しておこうかな。アハハ」
そんなふうに当てるバッティングで連打を重ねて得点をもぎ取るのが、チャンスを逃さない大人の攻撃力。部長がバイタリティで押し切るタイプの場合は、「パワーに押されないようにしないと」ぐらいで。
この段階で失点は取り返しましたが、攻撃の手をゆるめるわけにはいきません。
「だけど、いくら部長の地元でも、遠慮はしませんからね」
と、けん制球を投げ込みます。自分が戦うわけではありませんが、そこは気にする必要はありません。このあたりで、
「いやあ、自分が高校生の頃は、甲子園なんて夢のまた夢だったんですよ」
そんな外角高めに大きく外れるノンキな話をはさんで、息を整えます。部長も少し気を緩めたところで、いよいよ決め球。
「部長には勝てる要素がまったくありませんから、せめて高校野球では一矢報いさせてください」
と、内角の胸元をえぐる剛速球を投げ込んで、部長の心を揺さぶりましょう。
いざ試合の日を迎えて、結果的にこっちの高校が勝ったら、やや神妙な口調で「この先の試合、△△高校の分までがんばります」と前向きな姿勢を見せます。
負けた場合は、「おみそれいたしました!」と言いながら深々と頭を下げれば、部長はいい気持ちになってくれるでしょう。いわば逆転ホームランによるサヨナラ負けですが、会社員としてはむしろ逆転勝ちです。
試合を見ながら、母校の勝利を願うか、会社員としての勝利を願うか、どっちを応援するか迷ってしまいそうですね。