「女の子」が主人公の昔話を再話した「女の子の昔話えほん」シリーズが児童図書大手・偕成社から出版され、注目を集めている。日本と世界各地から昔話を集めた再話者の中脇初枝氏は「女性が自らの知恵や力で困難を乗り越え、自分の意志で生きていく話を選びました」と、作品に込めた思いを語った。
中脇氏は「昔話には女性が目立って活躍する話が少ない」と幼い頃から感じていたという。日本の有名な昔話といえば「桃太郎」や「浦島太郎」「かさじぞう」など、男性が主人公の話が多くある。「かぐや姫」や「鶴の恩返し」「雪女」などに女性が主要キャラクターとして登場することもあるが、「人間の女性」が主になる有名作品は多くない。また、海外作品では「シンデレラ」「白雪姫」など女性主人公の昔話が多くあるものの「受け身で従順で、つらい目にあっても耐え忍んでいると最後は王子様に助けられて幸せになる」話が多いという。
民俗学を学んだ経験を持つ中脇氏は、まだ広く知られていない各地の昔話の中には、女性が主人公の話も存在すると説明する。今作では、各地で伝えられてきた昔話から「女性が活躍する話」を選び絵本にした。結末には、主人公が結婚するばかりでなく「1人で無事に暮らせた」「豊かに暮らせた」など「自分なりの幸せをつかむ」姿が描かれている。
例えば、シリーズ2冊目の「わたしがテピンギー」は、知恵を使った女の子たちが一致団結し困難に立ち向かうハイチの昔話。中脇氏は「女性同士が美しさや地位を争う話が多いですが、『テピンギー』は女の子同士で助け合う話。『女の敵は女じゃない』と、すごく励まされた」と語った。
シリーズ第1弾の「ちからもちのおかね」は、力持ちの女の子「おかね」が自身の力で父や夫のピンチを助けるストーリー。高知県で代々山仕事をする男性たちが語り継いできた昔話を聞き取り、再話した。中脇氏は「男性が弱くて女性に助けてもらう話を、たくましいはずの猟師さんたちが伝えていた。『おかね』さんの話では男性は弱くてもいい、妻に助けられてもいいという思いが伝えられているように思いました」と話し、「『女の子の昔話』シリーズではあるんですが、男性にも読んでほしい。男性の生きづらさも良い方向にいくといいなと思っています」と期待を口にした。