角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』(KADOKAWA)が、今年2月の発売から9カ月で122万部を突破した。同シリーズ最終20巻には、新型コロナウイルス感染症やBLM(ブラック・ライヴズ・マター)など、最新の世界情勢が描かれた。編集長代理の石井康予氏は「後進行で白く空けたまま進めた」というラスト8ページのこだわりを語った。
新型コロナが中国・武漢市での感染爆発から、アジアや欧州、アメリカ、アフリカへと拡大。都市から人影が消え、人々の生活様式が激変する描写が続く。さらに白人警官による黒人男性殺害事件に起因するBLMが描かれた。シリーズ最後を締める8ページは当初の構想とは様変わりしていた。
在宅勤務やオンライン授業、ソーシャルディスタンスなど新型コロナウイルスにより一変した社会。2019年末の企画段階では、アメリカ大統領選挙や東京五輪を描く予定だったという。しかし、大統領選は混迷を極め、東京五輪はコロナ禍で延期。21年2月の発売に向け、20年4月にコロナ禍を大きく取り上げる方向にかじを切った。「ページを空けておいて待っていったらコロナになったという流れです。ある種『結果論』というと変かもしれないですが、歴史って生ものだなと感じましたね」と振り返った。
15年に発売した「日本の歴史」シリーズの購入者から「世界史版もつくってほしい」との要望を受け、17年から制作に着手した。東京大学名誉教授・羽田正氏監修のもと、各国、各地域の歴史を順々に並べるのではなく、地球を一つの単位としてとらえる歴史理解の方法「グローバルヒストリー」を採用。一冊ごとに年代を区切り、4地域を並行して紹介することで国や地域のつながりが理解しやすくなるよう構成した。各巻で取り扱う内容・人物を決める会議は半年にわたった。
多くの工夫を施した。軽量で持ち運びやすいソフトカバーの採用。ビジュアル面では、同社刊行の雑誌に登場する漫画家によって、現代風のイラストに仕上げた。羽田氏との試行錯誤の日々を振り返り「中身のコマ割りもすごく直しまして、分かりやすく、漫画としてもおもしろいように完成したと自負しています」と語った。
全20巻のうち、近現代史が11巻を占める。若い世代に現代史の理解を身につけてもらいたいという思いが込められた。「歴史と自分自身が近い距離で生きていけば、世の中の見方が変わると思います。この学習漫画が、歴史を学んでおいて良かったなと思ってもらえる入口になれば」と、期待を寄せた。