数年前から、インターネットの検索キーワードとして常に上位をキープしている「働く意味がわからない」というワード。コロナウイルスによる社会不安もあり、再びこの検索ワードが注目され、今年も数多くの「働く意味」を問い直す多種多様なコンテンツがつぎつぎと登場している。
肯定的で断定的なそんなコンテンツがあふれる中で、約10年前に描かれたとある漫画作品は「働く意味」について、答えを提示するのではなく、シュールな物語を展開しながら新たな視点を与えてくれる。今回はその作品と共に作者であるビューさんの解説を紹介する。
謎の仕事で、謎の手に出会う。「バイト」
壁に開いた穴からクラゲを引っ張り出す仕事をしている主人公の男性。なぜ、壁の中にクラゲはいるのか。なぜ、男性はこの仕事を続けているのか。それらの謎を秘めたまま物語は進み、あるとき穴の中に手を突っ込むと、クラゲではなく人の手を掴んでしまったことで、男性の仕事に向き合う心境に変化を訪れる。
「2012年のちばてつや賞で入選した短編です。すでに描いてから10年近く経っていますが、未だにこうして紹介していただける息の長い短編です。全編を通して夢のような、つかみどころのない世界だけど細部を描写することでリアリティを感じてもらえるようにしました。トイレスイッチとかありえないけど、ちょっとリアルというか。そういう小ネタを楽しみながら気楽に読んでもらえたら嬉しいです」と作者は語る。
穴に手を入れてクラゲを引っ張り出すバイトをしている主人公の男性。謎の仕事、謎の同僚、謎の社長、謎の隕石、謎の手。謎だらけの物語に、なぜかリアリティを感じてしまう。