打ち切り決定後に売れまくって連載継続 奇跡の復活「古代戦士ハニワット」

山本 鋼平 山本 鋼平

 「漫画アクション」(双葉社)で連載中の「古代戦士ハニワット」(作者・武富健治)が、打ち切り決定後に大反響を呼び、急転直下で連載が継続されることになった。担当編集者は「今まで聞いたことがありません。本当に珍しいことです」と〝奇跡の復活〟に感激した。

 文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞に輝き、映画化もされた「鈴木先生」で知られる武富健治氏が今月2日、自身のツイッターを更新した。「【打ち切り回避連載続行】決定しました。第三部も漫画アクションで連載できます。そして第二部も予定通りの尺で描かせて頂けることになりました。ベストの結末です!応援本当にありがとうございます。皆様のおかげです(泣)」。読者、編集部、関係各所への感謝をつづった。

 2018年7月に連載が開始され、単行本7巻までが発売中。奇跡の始まりは5月25日、「先日の打ち合わせで、ハニワットが、9巻までで連載終了(打ち切り)との通達がありました。これまでの成果を考えるとまったく無理のないことで、むしろここまで何のテコ入れもなく描かせて下さったことが異例とも言える温情の結果なのです」と報告したツイートだった。単行本の売れ行きが低調だったため、第二部を短縮して作品を終了させることが決まった。無念さを抑えきれず「9巻完結は、今後どうしても動かせない決定事項なのか確認したところ、《もちろん、このあと、明日にでもブレイクし、売り上げがものすごい勢いで上がれば、その時点で打ち切り決定は解消される》とのことでした。いつくらいまでが打ち切り中止を導くことのできる期限か聞いたところ、《終了ギリギリであっても変更は効くが、目安としては例えば、次の新刊(7巻)の発売前後の、新刊及び既刊分の売れ行きの動きだろう》と」と投稿。大ヒット作を誇る作家が必死になって、応援をお願いした。

 まず武富氏のファンや漫画好きから連載継続を望む声が続出。8月26日の単行本第7巻発売に際して、紀伊國屋書店新宿本店のコミック売り場がハニワットフェアを開催して全力プッシュ。9月上旬には武富氏がネット放送番組に出演して応援を求め、評論家の岡田斗司夫氏が自身のユーチューブチャンネルでその魅力を取り上げ、お笑い芸人のチョコレートプラネット長田が〝ハマってる漫画〟として紹介し、10月には都内で同作の原画展が開催された。

 担当編集者によると、9月に入り単行本の売れ行きが急増。「作品を知らなかった人に届いて、読んでくれているという勢いを感じました。一気に売れ始めました」。7巻だけではなく、1巻から数字が伸びた。新しい読者が生まれた証拠だった。9月下旬には「15年間編集に携わっていますが、本当に珍しい」という全巻重版の快挙を達成。勢いは衰えず連載継続が決まり「なんかもうヤッターって感じでした」と声を弾ませながら、その瞬間を振り返った。

 打ち切りが決まった作品の作者が、SNSで応援を求める行為は決して珍しいことではない。全巻重版に及ぶ魅力を持っていた打ち切り作品が希少だった。担当編集者は「全ての登場人物に重厚な人生があって、シンプルではないけれど、メチャクチャ面白い。打ち切りを伝えたときは申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今後は先生に第二部を描き切っていただいて、第三部はより多くの人に読んでいただけるように頑張っていきたいです」と意気込みを語った。

 「古代戦士ハニワット」は埴輪や土偶といった古代史をモチーフに、伝奇SFと変身ヒーローが融合した物語。「鈴木先生」でおなじみの濃密な心理描写、ドラマ演出が存分に発揮されている。第二部は来年夏までに完結する見込みで、単行本第8巻は12月27日発売予定。

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