芸能マネージャーとして奮闘する熊谷修宏氏が、これまで20年間の実体験を基に原作を担う本作。連載第2弾は、スカウトの悲哀が題材です。熊谷氏は次のように、作品の背景を語りました。
明治大学時代にお世話になったHさんからは、芸能マネージャーには3つの仕事がある、と教わりました。タレントをスカウトすること、育てること、お金にすること、です。お金にするとは、ドラマ出演やCMなどの仕事を、営業で取ってくることです。学生時代からタレントをスカウトしていましたが、育てること、お金にすることもやりたい、と考えていて、会社員時代も情熱は衰えませんでした。
大手メーカーを2年で退職し、Hさんの口利きでTさんの芸能プロダクションで働くことになりました。そこで気付いたのは、スカウトすることと、お金にすることは似ているということでした。どちらも自ら積極的に動いて、信頼されなければなりません。そういう意味でもスカウトは芸能マネージャーにとって大きな仕事なわけです。鉄則を2つ紹介します。「決して背後から声をかけない」これは相手を驚かせないようにするためです。「声をかけるより先に会社の名刺を見せる」人は活字の方に興味を示します。口から出る言葉はウソが多い、と考えるからでしょうか。
出向く先は昔も今も原宿と表参道です。最初からスカウトされるつもりの女性が集まってくる中で、何十枚も芸能プロダクションの名刺をコレクションしている猛者もいました。ある時、私の名刺を一目見て「何系?」と冷たい視線であしらわれた時は驚きました。お水系という意味なのか、もう芸能界の系列を熟知している人なのか、と思わずひるんでしまいました。