今年7月、東京都議選の期間中に無免許運転で当て逃げ事故を起こし書類送検されていた木下富美子都議は、9日に東京都議会に登庁。2度にわたる議員辞職勧告決議を受け入れず、辞職の考えがないことを強調した。
現行の法律では、木下都議の議席を強制的に剥奪することはできず、有権者らから不満の声が多発。この点について、弁護士法人・天音総合法律事務所の正木絢生代表弁護士が10日、よろず~ニュースの取材に応じ、解説した。
木下都議の地位を保全する法的根拠について、正木弁護士は「大きく分類すると『①民主主義の考え方および、それを具体化した日本国憲法』と『②法治主義の考え方』の2つです」と回答。①について「自治体のトップや他の議会が自由に他の議員をクビにできたら、ある程度の多数派が議会を完全に支配できてしまうことになる。今の民主主義は多様な意見を受け入れることで成り立っているので、多数派が少数派を勝手に排除できるような制度を取っていない」と解説し、「住民の選んだ議員を除名するには法律の根拠が必要となる。憲法の条文としては憲法93条が該当します」とした。
②については「公権力が他者の法的地位を変更するには、法律の根拠が必要。明文の根拠をなくクビにできる場合もあるが、それは採用する権限、選択する権限を持っている場合だけ。都知事や議会はあくまで『選ばれる側』であって、『選ぶ側』ではありません」と説明した。
辞職を拒否する木下都議が失職するのは、いわゆるリコールが成立した場合。地方自治法第80条に規定されており、選挙区内の有権者の3分の1以上の署名を経た上で代表者が解職請求を行い、住民投票で過半数の賛成を得れば成立するが、当選後1年間は請求ができないなど、そのハードルは高い。
同法第137条では「欠席議員の懲罰」として、議員が正当な理由なく招集に応じない場合や、正当な理由なく会議に欠席したために議長が特に招状を発してもなお応じない時には、議会の決議を経て除名することができるされているが、木下都議は9日に召喚状に応じて議会に姿を見せたため、この適用も難しいとされている。また、地方公務員法の規定により、禁固刑以上が課せられた場合は自動失職となるが、9月に書類送検された自動車運転処罰法違反容疑などの罪では、禁固刑以上が課せられる可能性はほぼない。
また木下都議は9日に報道陣に対し、休養していた3カ月間の議員報酬は公職選挙法に抵触しない形で全額寄付したと公表した。公選法における議員報酬については、第179条で「『収入』とは、金銭、物品その他の財産上の利益の収受、その収受の承諾又は約束をいう。『寄附』とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう」と規定されている。同199条の2で、自身の選挙区内での寄付は禁止されているが、正木弁護士によると、選挙区以外での寄付は問題ないという。