明治26年創業のお香ブランド薫寿堂から「香るオーナメント」が発売、商品開発秘話を聞いた

大原 絵理香 大原 絵理香

 明治26年創業のお香ブランド薫寿堂が、2019年3月よりリブランディングを行い、もともとあった技術を用い、若者に向けた葉っぱをモチーフとしたお香「HA KO」を発表した。

 これまでに定番のものから、春夏には「サンショウの葉」や「アサガオの葉」を、秋冬には「イチョウの葉」や「ヒイラギの葉」をモチーフとしたものを。また、より男性をターゲットとした同デザインでのブラックラインなど、精力的にブランディング商品の開発を行っている。

 そして、今年のクリスマスに向けた商品として発表したのが、クスノキやヒイラギをモチーフにした“香るオーナメント”。シルク紐つきでクリスマスツリーやクリスマスリースに飾り、楽しんだあとはお香として使用ができる。

 今回は、リブランディングの話から商品自体の話まで、薫寿堂の魚住さんと、リブランディングを担当した東急エージェンシーの林さんに話を聞いた。

――1893年(明治26年)創業の薫寿堂が、2019年よりリブランディングを行うことになった経緯を教えてください。

薫寿堂・魚住(以下、魚住):香りをたのしむ文化を継承していくため、幅広い年齢層に気軽にお香を使ってもらえるよう、紙という身近な素材で新しいお香を開発しました。その紙のお香の認知度を上げるため、ブランディングをデザイナーである林さんにお願いしました。

――お二人の出会いはなんだったのでしょうか。

東急エージェンシー・林(以下、林):薫寿堂の会長のお知り合いに「紙の仕事人」という肩書きの方がいて、その方に繋いでいただきました。いまでは、魚住さんとは恋人以上に毎日何度もLINEをする仲です(笑)。

――リブランディングする際に、意識した点や注意した点などがあれば教えてください。

魚住:海外にも好まれ、広く親しまれる形、アイテムにしたいと林さんにはご相談していました。
林:香りには形がなく、お香といえば、細長いお線香かコーン型・渦巻き型といった形が定番です。そこで和紙という材質の特徴を活かしてお香自体に形を与え、目で見て楽しめるお香にしたいと考えました。そのなかで、昔はよく焚き火をしたなぁと思い出し、葉っぱの形にしたら落ち葉焚きの気分で楽しめるかな、とデザインするにいたりました。

――「HA KO」についての、社内とお客様の評判それぞれを教えてください。

魚住:社内では自分たちの作ったお香がこんなに素敵に生まれ変わって嬉しいという感想が多かったです。「HA KO」のお客様には、火をつけるのがもったいないくらい、葉っぱの形や葉脈まで繊細に表現されているお香だと感嘆されました。

――社内には伝統を大切にされていらっしゃるスタッフの方も多くいらっしゃると思いますが、彼らとはどのような均整を取っていったのでしょうか。

魚住:弊社はこれまで積み上げてきた伝統と技術を礎に、常に時代やお客様のニーズに合った商品作りを心掛けています。昭和50年、お客様のご要望で世界初となる微煙タイプのお線香を開発。続いて香りをマイクロカプセルに閉じ込めて、点火して初めて香り立つ「点火発香式」で特許を取得したり、常に新しい商品に挑戦したりする姿勢は、長年社内で踏襲されてきておりますので、今回もネガティブな意見などはありませんでした。

――今回は「HA KO」を「香るオーナメント」としてクリスマス仕様にされていました。葉っぱもクスノキやヒイラギなど冬仕様ですが、「HA KO」の葉っぱの種類はどのように決められているのでしょうか。

林:できるだけどこにでもある葉っぱで、ラインナップが豊かに見えるバリエーションを意識して、特徴をきちんと再現できるかどうか検証してから決めています。植物図鑑を眺めながら、近所や旅先で拾った葉っぱをたくさんストックしています。特に秋は落ち葉の季節。落ちたての葉っぱが多く綺麗なので、身の回りが葉っぱだらけになっています。

――リブランディングにおいて、今後考えていることや構想があれば教えてください。

林:「HA KO」でお香に興味を持ってくださった方が、伝統的な製造方法の本格的なお香に挑戦できるような、新しいコンセプトのお香の販売を考えています。伝統的な商品と新しい形態の商品と、両方をブラッシュアップして定番化していくことで、薫寿堂の伝統に基づいた技術力と革新性を体現していけたら理想的です。

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