今、辛口な若者たちの映画が世界的に存在する意味 上映3作品にみる無数の「いいね」から得るもの

伊藤 さとり 伊藤 さとり
映画「ビルド・ア・ガール」=(C)Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019
映画「ビルド・ア・ガール」=(C)Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019

 この3作品の共通点は、現代社会が抱える発達心理において経験する「承認欲求」がねじれた行動に出たものであり、批判(非難)することが真の“正義”であると考え、その結果、無数の「いいね」から「自己肯定感」を得るというものでした。

 この映画の主人公たちは親が忙しく褒めてもらえずに思春期を過ごし、情報を発信する場に居場所を見出した結果、多くの人が炎上や好感度を気にして口にしない他者への「批判」を辛口で表現することで、周囲の目を気にしない堂々たる物言いでカリスマになっていきます。しかし他者を巻き込んだ上での痛烈な批判の代償は大きく、人間関係が崩壊した際にどう立ち直っていくのかをそれぞれの映画が独自の視点で提示しています。

 確かに今やSNS社会となって一億総批評家気取りが出来る状況で、「非難」を「批評」だと勘違いしてしまう人々の言動が問題視されています。実際、辛口なコメントは人目を引きますが、その言葉のナイフで刺された人々の心は深い傷を追い、時には世界から去ってしまう人も存在します。そんな中、親として思うのはもっと子供を褒める人間にならねばと考えさせられるのです。 特に日本人は褒めるのが下手であり、長きに渡り謙虚であることや我慢することを美徳とする文化が成立していました。けれど情報があふれ、ひとり一台スマートフォンを持つ現代では、家庭での会話は減少し、親から褒められずとも他者からの高評価をSNSで得られることからSNS依存が生まれている状況です。

 本来は人と人との対面での「褒められた経験」やぬくもりから愛情を感じ、自分は大丈夫だという安心感を得ることで「自己肯定感」は高まり、他者にも寛容な人間に育っていきます。だからこそ大人達が「褒める」社会作りを意識することで他者への攻撃は減少し、多くの人が自分への幸福度を上げる結果を生む気がしてならないのですが…。

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