男のプライドばかりを賭けた「最後の決闘裁判」が描きたかったこと

伊藤 さとり 伊藤 さとり
メインキャストの(左から)アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、マット・デイモン=(C)2021 20th Century Studios.All Rights Reserved
メインキャストの(左から)アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、マット・デイモン=(C)2021 20th Century Studios.All Rights Reserved

 それによりこれが中世とはいえ、現代も最高裁判裁判所の裁判官は男性の比率が多く、国を守る政治家も男性ばかりであると映画を見て気付いてしまうのです。では女性が増えれば世界は変わるのか?この問いに映画は注意勧告を示します。劇中、妻の女友達が彼女に不利となる内容を裁判所に密告するのです。しかし、それは女友達自身が、男性社会が生み出した“目に見えない常識”に囚われた故の行動にも思えるのです。

 彼女にとってはマルグリットの行動自体が女性の中の異端児であり、「女性は慎ましやかにあるべき」という洗脳から生まれたもので、その考えは周囲の男性たちとなんら変わらないのです。だからこそ、性別ばかりを重視して政治家の男女比率を同等にするのは危険なのではないでしょうか。大切なことは、弱者の声に耳を貸し、私利私欲ではなく、不平等で苦しむ市民を救う政治家。もちろん、女性たちの声を的確に届ける女性政治家が今後、増えるのが理想ですが。

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